答えがわからなくても粘り強く考える姿勢を「それなら…26×26×26×26かなあ」再び全員での共有の時間。前の事例と違い、「選択しても候補が減らない構造」であることを皆で理解し、その際の「場合の数の計算の仕方」も編み出した。最後に、全体の対話で活動内容をふり返り、ここまでの計算式を「n個」などの文字や記号を使って一般化する。その式が教科書に公式として載っているのを確認してから、練習問題に進んだ。「自分で状況を整理し、見通しを立て、試行錯誤しながら意思決定する。そうした問題解決の力を高めたいと思っています。AIの発展で『平均化された答え』は得やすくなった今、『自分で考えて自分なりの答えを出す』ことの価値はむしろ高まっていると思うのです。経済産業省の『未来人材ビジョン』でも、2050年に向けた重要なスキルとして、問題発見力、的確な予測、的確な決定等が挙げられています」解法などの手順を頭に入れること。その手順が成り立つ大元の概念を理解していなくても、問題演習の量をこなせば、手順を理解した領域を広げることはできる。だが、五味先生はそうした学習に懐疑的なのだ。生徒が手続き的理解に傾倒すると、見覚えのある問題には確かに強くなるが、一方で、未知の問題に遭遇すると「自力では解けないと諦めて、飛ばすようになる」傾向を感じてきたからだ。「実社会の仕事では『正解が用意されている問題に取り組む』ことより、『不確実な状況のなかで自分なりの判断を下す』ことが大切になります。すぐに答えが出ない状況のなかでも考え続けるという、いわゆるネガティブ・ケイパビリティに通じる力も育みたいのです。自分のもつ知識や経験を基に、他者との対話も重ねながら、粘り強く考えることで、新しいアイデアや視点を手にしてほしいと思っています」たちが手探りで考えた。今までに個別に学んだ「絶対値」「方程式」「不等式」の知識をつなぎあわせて考える問題だ。で話し合い、全員での対話も重ね、アイデアを整理した。終盤で教科書の該当ページを確認。そこには今自分たちで導き出した概念がまとめられていた。五味先生がひと際魂を込めて語りかける。「このページを公式のようにただ覚えないでくださいね。今日のように、なぜこうしたことが成り立つのか、自分で考えて、その意味から理解しましょう」き的理解」がある。後者は、公式を用いた数学Ⅰの授業では、「絶対値を含む方程式・不等式はどう解けばいいか」を生徒どう考えればよいか、前後左右の生徒数学の理解には「概念的理解」と「手続概念を伝授例題を解く問題を提示構造を見出す問題演習問題解決/概念構築伝統的な数学の授業構成主義的な数学の授業図1 数学の授業の進め方55数学的概念を教員が解説(ある公式がなぜ成り立つのか、どう活用できるか、など)学んだ概念を活かせる例題を生徒が解く問題を投げかけ、どのように考えていけばよいかを生徒と対話しながら検討する問題に通底する構造(パターンや原則)を生徒が見出し、数学で表現する多様なパターンの問題を解き、概念の理解を深めたり、解く手順に慣れたりする問題を数学的に処理して解決。ここまでの思考を振り返り、一般化できる概念を構築リレーメンバーの選出に続き、文字を組み合わせたパスワードの安全性を考える問題。生徒たちは、身近な例が示されたことで、「何通りあるか」をその具体例を思い浮かべながら考えることができた。授業は「対話」を中心に進めるが、グループ学習の形式ではない。前後左右の生徒同士で話し合ったり、五味先生が話を回しながら皆で意見を出し合ったりと、インフォーマルな対話を重視している。数学Ⅰの授業。「方程式ってどう解くんだっけ?」絶対値ってどんなやつ?」などと問い、生徒の発言を集約・共有したうえで、複合問題である「絶対値を含む方程式・不等式」を解くことに皆で挑んだ。問題を解く鍵は、xの絶対値すなわち|x|を、「数直線上の原点からxまでの距離」という定義に立ち戻って考えること。|x|>3の問題に挑んだときは誤答も多くなり、なぜそれが誤りかも皆で考えた。教科書には「絶対値を含む方程式・不等式」をどのように解くかの説明に続いて、要点として「不等式|x|>cの解は x<-c,c<x」になるといった記述もある。これを暗記すれば問題は解けるが…2026 JUL. Vol.459知識伝達型。最初に教わる数学的概念をきちんと理解し、社会の幅広い事象に応用していけるようになる生徒がいる一方で、抽象的な概念をいきなり理解するのが難しく、「こういう問題はこの公式でこんな手順で解けばいい」という手続き的理解のみに留まる生徒も少なくない。後者の生徒の場合、「未知のパターンの問題」に遭遇すると、覚えた手順だけでは通用しないため、「自力では解けない」と感じてしまいやすい。知識構築型。「既有の数学的知識や経験をもとに問題に向き合い、教師や他者との対話を通して、新しい知識や概念を構築していく」。こうした思考が身につけば、「未知の問題」でも「まずは自分で考えてみよう」「構造を見出して解決策を探ろう」とする姿勢が育つ。そのように生徒の思考から数学的概念が立ち上がるようにするには、生徒のつまずきや思考の流れを予想したうえでの綿密な授業デザインが必要になる。
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