義的な授業を志向するようになる。初より理論に基づく授業実践を心がけた。学においては、自分が一度理解したことは「わからない状態がわからなくなる」もので、その落とし穴にはまったのだ。「典型例が立体の図です。平面上の3次元の図形について、一度実物を見て構造を認知すると、形を認識しづらかった前の感覚にもう戻れません。それと同じで、数学に親しんだ自分では『生徒がどこでつまずくのか』を捉えきれずにいたのです。授業の準備を一生懸命しても、予想外のところで生徒の思考が止まったり…」「単元ごと、問題ごとに『この内容における生徒の理解の困難性はどこにあるか』『生徒はどのような思考プロセスをたどるか』をとことん考える」ようになった。愛知県の公立高校の教員になると、当しかし、そこで分厚い壁にぶつかった。数だからこそ、授業準備の出発点として、また、授業を通して生徒の思考が自然に深まるよう、対話的な学びも重視した。数学に苦手意識のある生徒から疑問を引き出す。数学が得意な生徒からアイデアを募る。それら話題を「どう思う?」とほかの生徒に振って話を広げる。「全体をどんどん巻き込む対話」を心がけたという。そうした生徒たちとの柔軟なやり取りを、最初からできたわけではない。それこそ院生時代は「下手くそだった」そうで、恩師からこんな助言をもらった。「(お笑い芸人の)チュートリアルの漫才『冷蔵庫』を観なさい。その漫才であなたが良いと思ったことを意識しなさい」鑑賞して五味先生は気づかされた。「教員もある種の演者。対話的な授業を実現するには、答えを知っていることでも生徒たちと同じ目線に立ち、新鮮な気持ちで学びを一緒に楽しむことが大切だ」と。 初任校に4年間勤務後、現任校へ。その間も、図2のように指導案の作成から工夫し、授業の質の向上に努めてきた。高校1年生のとき、テスト前日に数学の勉強をしていた五味先生は、同級生から質問を受け、黒板を使って説明した。その夜、布団に入ると「こう説明すればよかった」「この例も出せばよかった」と自然に振り返っている自分がいたという。もしこれが仕事になれば、どこまでも考え続けてがんばれるんじゃないか。そう感じたのが、教師を目指したきっかけだった。大学の数学科で数学を専攻し、さらに大学院で数学教育の理論も研究。構成主生徒の「わからない状態」をどうすれば理解できるのか56数学A「順列」の授業の指導案。展開ごとに生徒がどう思考するか、その予想も記入している。指導案の作成では「授業の目標は一つにする」と決めている。そしてその目標を実現するために、授業の構成を考える。目標を明確にしないと「あれもこれも教えなければ」という発想になりがちで、授業のねらいがぼやけるからだ。授業の組み立てでは、次の観点を満たすことも意識している。・数学教育学研究者・西村圭一氏の「授業デザインのレベル」の最上位(資質・能力育成を意図して問題設定、生徒の思考を予想等)・学習科学研究者・R.K.ソーヤー氏の「深い学習に必要な6つの要素」(新概念と既存知識の関連づけ、対話による知識創造、振り返り等)指導案は生徒の理解困難性や思考プロセスを踏まえ、入念に作成。しかし授業が始まったら、その計画をいったん忘れるぐらいの気持ちで、指導案に縛られないように心がける。事前に決めた「一つの目標」に向かうことだけ強く意識し、状況に応じて臨機応変に流れを変えていく。授業の実践後、振り返り、改善策を検討。そのうえで、次回またやるときに備えて新たな指導案の作成まで行う(次回が次年度でも)。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)とよく言うが、2回目のPlanまでを1セットにし、着実に授業改善を進めている。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.459)対話を楽しむ五味先生。その五味先生が今でも見返し、参考にしているというチュートリアルの漫才『冷蔵庫』は、公式動画がアップされていて誰でも鑑賞できる。創立1973年/普通科生徒数338人(男子139人、女子199人)進路状況(2026年3月卒業)大学103人、短大2人、専門学校7人、就職1人、その他2人教育目標は「あたたかい人間になろうたくましい人間になろう おおらかな人間になろう」。教育大学の附属高校として「『日本一の学び』が実現できる学校」も目指す。その一環として、2026年度より全教員で授業探究にも取り組んでいる。2026 JUL. Vol.459 身近な問題を交えて豊かな対話のある授業を公民村田拓也先生──五味先生とはどんな関わりがありますか。 同じ学年団に所属しています。また、今年度より教員全員で進めている教科横断の授業探究においても、同じチームで活動しています。──五味先生の授業の取組で、共感されているところはありますか。 生徒が身近な問題を考えるなかで、数学の知識や技能を使っていく、という授業をされていることです。リレーのメンバーをどう選ぶか、とか。私の担当科目の公民でもよくやるんです。選挙制度を学ぶときに、「学校祭の出し物をどう決めようか?」という話から入り、単純多数決やボルダルールの仕組みを学びながら、何が良いか考える、というように。公民はそうした接点をつくりやすいですが、数学の授業でそれを実現しているのがすごいなと思います。 対話を重視されているところにも共感しています。私の前職は予備校の講師なのですが、その頃から、社会科が得意な子やリアクションの大きな子と、私がどんどん掛け合いをして話を広げ、ほかの子たちも一緒に考えたくなるような授業を目指してきたんです。今もそうした対話は大事にしています。五味先生は、さらに生徒同士の対話を促すのもうまいので、その点を今後、私も見習っていきたいですね。愛知教育大学附属高校(愛知・国立)図2 指導案の作成・実施で意識すること① 授業の目標は一つにする② 指標をもって授業を構成③ 授業中は指導案に縛られない④ PDCAPを1セットにINTERVIEW・教科を越えたつながり
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