カレッジマネジメント177号
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■少額多募でもらいやすく上させる必要がある。教育の質を向上させるためには,優秀な教員や施設設備へ費用をかけなければならない。質の向上には上限はないから、どうしても大学の支出は増大する。他方、多くの国では、公財政が逼迫し、政府からの補助が減少している。このため、増大する費用をまかなうためには、授業料を上げざるを得ないのである。しかし、わが国の場合には、学長アンケートから見る限り、授業料の「据え置き」や「従来通り」の方針など、現状維持も戦略とするあるいは模様眺めの戦略をとる大学が多いように見受けられる。特に公立大学ではこの傾向が強い。他方、多くの国では、授業料の値上げと公的奨学金あるいは大学独自奨学金を組み合わせた政策をとっている。授業料を値上げすれば、負担能力に乏しい家計は進学を諦めるか、学費や生活費の安い教育機関(短期大学など)に進路を変更する可能性が高まる。しかし、それでは、教育機会の均等が脅かされる。有為な人材が進学できないのは、その個人にとっても損失だが、社会にとっても大きな損失である。このため、多くの国では教育機会の均等を達成するために、奨学金を充実させている。大学にとっても、その大学が望む学生を獲得するために,奨学金は重要な役割を果たしている。■ニードベースとメリットベースで ターゲティングこのように多くの国で普及しているのは、授業料も値上げすると同時に、独自給付奨学金も増やすという高授業料・高奨学金政策である。しかし、わが国の大学の現状では、英米の大学で採用されているような、高授業料・高奨学金政策には移行しにくい。その理由のひとつは、給付型奨学金の原資は基金の運用収益をあてているためである。日本の多くの大学では給付奨学金に使えるような十分な基金がないため、高い授業料を取る学生から給付奨学生への直接の補助になっているという性格が見えやすい。このため、わが国の感覚からいえば、公平でないとみなされる可能性が高い。このため、高授業料・高奨学金政策をとる大学が今後増加していくとは考えにくく、結果として、授業料は据え置き、授業料減免と独自奨学金はやや増加という大学が増えていくと考えられる。しかし、これは個々の大学の財務には費用の増加となり、ますます大学経営を苦しくする可能性があり、早急な対応が必要だろう。例えば、イギリスの大学でも基金はほとんど持っていないが、2006年度より高授業料・高奨学金政策を実施している。わが国で今後どの程度導入されるか,さらに注目していくことが必要であろう。今後は、各大学が自己の大学のミッションに基づき、進むべき方向性に合わせ、学費・奨学金を戦略化することで、大学の個性化につなげる必要がある。このためには、公的奨学金はニードベース、大学独自奨学金はメリットベース、などと棲み分けるのも一つのあり方であろう。メリットベースの「メリット」は必ずしも学力優秀とは限らない。自校の望む学生であり、ミッションにより異なる。例えば、地方出身者や地元出身者もこの「メリット」と考えられる。いずれにせよ、奨学金を募集戦略とするなら、ターゲティングを明確にする必要がある。ただ、逆に、学力基準を低く設定するなら、自校の教育を重視して、付加価値をつけるなど、学力に応じて選べる仕組みにする必要があるなど、工夫が必要である。学生や保護者の立場からすれば、奨学金は、返済不要の給付型が望ましいことは、言うまでもない。アメリカやイギリスだけでなく、韓国などでも学費ローンの負担が問題となり、給付型へ一部の奨学金をシフトさせるなどの改革が進行中である。大学独自奨学金の場合でも給付型が望ましいというのは先にも述べた通りである。しかし、独自奨学金を給付型とするなら、限られた経営資源(体力)の、どこから財源を持ってくるかということが大きな問題である。原資が基金であることが望ましいと先に述べたが、早急には基金を増やすことは難しい。このため、給付奨学金は、短期的には大幅に増やすのは難しい。これに対して、少額多募でもらいやすくする等の工夫も必要だろう。私立の奨学金は多額少数型(例 40万円を2人)の傾向が見られるが、これを20万円とすれば4人、10万円とすれば8人が受給できる。この決定のためにも奨学金がどのような効果を持っているか、調査分析が重要である。同じように、国立大学の授業料減免も半分か全額の2パターンと画一的であり、4分の1減免なども検討していい。大学の奨学金はもっと自由度が高いものにできるはずである。20リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 2012

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