■顧客視点の情報提供■顧客視点の情報提供多くの大学では、学費・授業料減免・奨学金の学生募集への効果を明確に把握していないと思われる。中退との関連も同様である。こうした点を明確にするのは、学生や保護者に対して説明責任を果たすことだけでなく、大学が社会的説明責任を果たすことでもある。授業料や奨学金が複雑化するにつれて、学生や保護者への説明が重要になっている。多くの大学では、資料を提供したり、ガイダンスを実施したりしているが、個別の説明や相談まで実施している大学は少ない。特に、わが国では、入学後しか独自奨学金の情報を得られない場合が多い。例えば、具体的な金額、募集人数、自分は受けられるのかなどの情報を、入学前に示すことが今後は重要となるだろう。他方で、「日本学生支援機構の奨学金を利用している学生の中で奨学金として自覚に欠ける者が目立つ。新学年を迎える前に奨学金継続の手続きを忘れて奨学金が停止になって学費が支払えなくなったり、保護者が独断で奨学金を学生に申し込ませることで、自分自身が奨学生であることを知らない学生もいたりする。奨学生とは選ばれた学生であるので、説明会などで学生に自覚を一層促す必要がある」といった意見もあった。これは学生側の問題を指摘するものであるが、今後は大学が、こうした学生や保護者への説明をさらに充実させる必要があることも指摘している。それは、国立大学運営費交付金や私学国庫助成などの公的補助を受けながら、高い授業料を取っている大学が社会に対する説明責任を果たすことでもある。また、高校の進路指導担当者にとっては、これまでは“合格可能性”が最も重要な進学指導の情報であった。学費や奨学金の問題については、あまり指導もしていないし、情報が多すぎて、複雑化する学費や奨学金について説明することも難しい。他方、従来のスクールカウンセラーもメンタル関係が専門なので、お金の話(金融教育)ができない。これからは、高校職員や大学職員に対し、広い意味での金融教育が必要であろう。学長アンケートでも小規模大学は個別対応ができていないという状況が明らかにされた。さらに説明責任を果たすだけでなく、今後大学に求められるのは、学費・奨学金と募集・中退との影響を各大学が把握し、それに応じて積極的、効果的な戦略を打ち立てることではないか。少子化と公的補助の減少という厳しい状況に対して、「据え置き」や「現状維持」の方針だけで乗り切るのは難しい。早急にしかし焦ることなく的確な戦略が求められているのである。(1)調査対象 全国の大学744校 (2)調査方法 質問紙による郵送法(3)調査期間 2012年6月14日(木)~7月13日(金)(4)回 収 数 有効回収数 497サンプル(有効回答率66.8%)※一部の設問では、大学から単数回答について、複数の回答があり�るとの問い合わせがあり(例 授業料減免基準)、複数回答するよ�に依頼したため、 回答大学数より回答数が多くなっている。 ※無回答を含まない集計結果を提示している。 (全国の大学数は783校(平成24年度学校基本調査速報値)であるが、大学院大学と募集停止校の39校を除いた)設置形態 地域別回答校 規模別回答校 無回答2.4 国立12.1(%) 公立10.7 私立74.7 北海道・東北 関東 中部・北陸 関西 中国・四国 九州・沖縄 無回答 0 1.2 10 20 30 40(%)12.1(%)10000人以上 5000-9999人 3000-4999人 1000-2999人 500-999人 300-499人 300人未満 無回答 0 29.818.0 19.8 9.3 9.7 リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 201210 20 8.9(%)15.0 13.4 15.0 8.1 4.0 0.6 30 40(%)35.0 21経営戦略としての学 費調 査 概 要
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