カレッジマネジメント177号
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1事 例慶應義塾大学慶應義塾大学(以下、慶應)では、「学問のすゝめ奨学金」の導入をはじめ、奨学金全般の見直しを手掛けるとともに、法学部の地方学生向けのAO入試、学生寮新設など、優秀で多様な学生の獲得に向けた改革を次々と行っている。その狙いはどこにあるのか、長谷山彰常任理事にお話をうかがった。2012年4月から地方からの入学者を支援する「学問のすゝめ奨学金」を開始した。一般入学試験前に申し込み、書類選考により候補者認定を受けた合格者は、入学後の奨学金として60万円/年(医学部は90万円/年、薬学部薬学科は80万円/年)を約束される制度で、例えば文学部であれば授業料80万円の約8割まで賄える。慶應の理念やそれぞれの学部の教育に共鳴して、ぜひ慶應で学びたいという優秀な地方人材を引き付けるための支援策といえるが、その特徴は、「地方出身者対象・一般入学試験前予約・給付奨学金」の3点である。第一の特徴の「地方出身者対象」は、首都圏(1都3県:東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外の地域について、北海道・東北12名、北関東・甲信越12名、北陸・東海21名、近畿19名、中国・四国28名、九州・沖縄15名と、6つの地域ブロックごとに定員を設けていることである。慶應では創立以来、学ぶ志のある者に開かれた学塾という理念で全国から多様なバックグラウンドを持つ学生に広く開放してきた。ゼミやサークルにも地方出身者は必ず何人もおり、地方に帰ってからも、よいネットワークが続いている伝統があった。しかし、景気低迷の影響もあり、地方の優秀な学生は地元に近い国公立大学を選ぶ傾向が強まり、その結果、慶應の学生のうち、約7割が首都圏出身者になった。図1には最近5年間の一般入学試験の入学許可者の地域シェアを示したが、首都圏出身者が59%から68%へと急増しており、多様な学生の確保がこの4、5年に大きな課題となってきた。第二の特徴は「一般入学試験前予約」である。慶應以外にも早稲田大、お茶の水女子大、新潟大、立命館大、電気通信大、関西学院大などもこうしたタイプの奨学金をスタートさせている。長谷山常任理事は、「家計水準の影響は入学後の生活水準の違いより、むしろ入学前の進学の有無や進学先の選定に対する影響が大きい」という筆者の研究※1も引用しつつ、「家計水準の影響は入学前が肝心。優秀だが、大学進学を躊躇する人が安心して大学進学を決断できる方向にサポートすることが重要」だという。実は慶應では創立150年の2008年に、地方出身者のための家賃補助制度を創設した。しかし、大きな原資で実施した割に目に見えた効果が出なかったという。地方の受験生に訴求するポイントは「私学リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 2012長谷山 彰 常任理事22「学問のすゝめ奨学金」で多様な学生を取り込む優秀で多様な学生の獲得を目指す

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