カレッジマネジメント177号
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図表1 2012年度「米田吉盛教育奨学金」の成長支援の奨学金制度一覧というのはあくまで一つの手段であり、それを得ることをゴールとせず、その後に成長してもらうことが重要だと学長はいう。そもそも、神奈川大学では「学び」を自校の学生の成長に寄与しうる全ての活動として広く捉え、奨学金の対象とする「学び」もエリート層に求められるような側面にはとどめていない。入学選考別に学年推移で比較をすると、神奈川大学では、推薦入試で入学した学生のほうが、学力型入試で入ってきた学生よりも成績(秀の数)・取得単位数ともに学年を追うごとに上回っており、就職内定率においてもその違いが明確にみられると学長は言う。東京都や神奈川県出身の学生には、幼いころから受験経験が豊かで、その結果、大学に入学した段階で「自分の力はこの程度」と自身を見限るような学生もおり、こうした学生に比べると、推薦入試で入学した学生は4年間の大学生活の過ごし方やモチベーションが違うという。その背景には、自己肯定感の違いがあり、学力型入試で入ってきた学生を含めてそれを高めてあげることが、学生の成長につながると考えている。エリート層に対しては、良かれ悪しかれ、他者からの評価がなされやすい。しかし、神奈川大学がその育成を使命とするミドル層に対しては、十分な評価が他者からなされるとは限らない。ミドル層を育て、良質なものとするには、エリート層以上に自己肯定感を持たせることが重要である。そのために有効な支援が、神奈川大学ではボランティア活動やインターンシップ、海外留学・語学研修といった正課外活動にちりばめられている。こうした機会を用意するだけでなく、学生が実際に活用できるように、経済的な側面か自己実現・成長支援奨学金成長支援指定資格取得・進路支援奨学金海外活動支援奨学金学部生・大学院生28らも支援することが、新設された「成長支援のための」奨学金制度の目的なのである。神奈川大学では、意欲ある学生を積極的に支援するような奨学金制度の改革を今後も継続的に進めていきたいという。しかし、学費水準を据え置きながら学生支援を充実させていくといった方策は、大学の財政面からみると大きな圧迫要因となりうる。財務に苦しむ中で、「いかにして長期的に奨学金制度を維持していくか」といった問題を抱える大学も多いだろう。神奈川大学の充実した奨学金制度を支えているのは、トップクラスの安定した財政基盤である。財政面を含め学校法人経営に対する外部評価を受け、日本格付研究所(JCR)より長期優先債務の格付け「AA(ダブルAフラット)/安定的」を取得している。2006年に実施した改革の際に実質的な定員増を行ったこと等により、その財政基盤を作ったのだという。ただし、経常収入を特定の学生に集中してあてることには議論があるため、奨学基金として第3号基本金を原資としつつ、堅実な運用や募金活動も進めている。2009年11月より受付を開始した「学校法人神奈川大学米田吉盛教育奨学金募金」は2012年3月31日までを第一期募集期間とし、厳しい経済状況の中、多くの個人・法人の賛同を得て、総額1億2800万円を超える寄付金を集めている。さらに、2012年4月から3年間をめどに第二期の募金活動を開始し、2023年には総額100億円を積みたてることを目標に引き続きの支援を募っている。リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 2012名 称学部生活動内容・実績による20万円〜30万円(資格・進路による)学部生5万円〜80万円(留学先・期間による)対 象金 額期 間1度限り(ただし、異なる活動の実績をあげた場合は可)1度限り(ただし、試験分野が異なる場合は可)募集要項の規定による学術、文芸、スポーツ、社会活動など、様々な分野において明確な目的を持ち、優れた業績を上げ、さらに挑戦し続ける意欲のある学生を支援します。公認会計士や税理士、国家公務員採用総合職試験など難易度の高い資格試験合格や、TOEIC®での高得点取得などに挑戦し、実績を上げた学生を支援します。短期海外研修や交換留学などに参加する学生に対して、その活動内容に応じて支援します。内 容2012年度採用予定人数(人)100 24116充実した奨学金制度を支える財政基盤

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