カレッジマネジメント177号
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3事 例金城学院大学名古屋市のやや郊外に位置する金城学院大学が、その沿革を1889年まで遡ることができ、戦前期に専門学校令による高等教育機関となっていたこと、大学名に女子はないがミッション系の女子大であること、を知る人は多くはないかもしれない。だが、東海地区では伝統校としての知名度は高い。2012年度現在、5学部13学科・コースからなり在学者数約5,500人を擁する中規模大学であり、女子大で6年制の薬学部を持つことに特色がある。この金城学院大学が、極めてユニークな他に例をみない「金城サポート奨学金」(学内関係者は「金サポ」と呼称している)を2011年度入試より開始した。この奨学金の特徴を端的に言えば、一般入試(前期)試験の成績上位者は年間の学費(授業料と施設設備費の合計)が50万円になるというものである。年間50万円の学費とは国公立大学の約53万円よりも安く、その魅力は大きい。ただ、よくよく考えれば、「奨学金」と言いつつ、「学費の割引」になるとは何か奇妙である。なぜ、奨学金が学費の割引に連動しているのか、その仕組みをみることにしよう。まず、この奨学金の給付基準は、1)一般入試(前期)試験3科目型受験者のうち得点率80%以上の者、2)一般入試(前期)試験2科目型受験者のうち得点率90%以上の者、3)2013年度より開設される音楽芸術学科は、2科目型受験者のうち音楽実技で得点率90%以上の者となっている。そして、この基準をクリアした者のうち、入試の得点順に実人数で100名を支給対象者とし、合格通知とともに「金城サポート奨学金」に選ばれたことを連絡する。受験生は、3回(薬学科は2回)実施される一般入試(前期)試験のうち、3回とも受験するチャンスがある、従って、最大3回の受験のうちどこかで上記基準を満たすことができれば、支給対象者としてカウントされる。さて、次に興味深いのは、奨学金と学費との関係である。どの学部・学科に進学しようが、「金城サポート奨学金」に選ばれた者は年間の学費が50万円になる。即ち各学部・学科の学費と実際に納入する学費との差額が、奨学金なのである。入学時点で選ばれた者は、その後も各学年末の成績(GPA)が各学科の上位40%以内に入っていれば、継続して受給できる。順調に奨学金を受給できれば、4年間の学費は200万円、6年制の薬学部でも300万円ですむ。では、規定の学費との差額である奨学金は、どの程度の額になるのだろう。たとえば、最も学費の安い文学部では4年間で236万円、最も高い薬学部では6年間で870万円になる。実際に負担する学費を超える金額の奨学金をもらえる仕組みなのだ。奨学金の支給方法もユニークである。通常、奨学金は学費リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 2012奥村隆平 学長30学費一律50万円、「金サポ」の開始ニード・ベースとメリット・ベースの組み合せ──金城サポート奨学金

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