象者が17名、2012年度合格者58名中の支給対象者が12名である。確かに、一般入試(前期)試験の合格平均点と最低点をみると、薬学科と食環境栄養学科は他学科よりも高く、難関であることが分かる。奨学金支給対象者が多いのも、それに対応していると理解することができる。また、薬剤師、管理栄養士といった国家資格の取得につながる学科において、支給対象者が多いということは、それらが人気学科であるとともに、他校と競合する学科であることを意味する。特に、2005年度に設立された薬学部薬学科は、東海地区では後発組であるだけでなく、先発組の名古屋市立大学、岐阜薬科大学といった公立大学、私学の名城大学がいずれも男女共学であるなかで、女子大の薬学部としてレーゾンデートルを示さねばならないという課題を負っている。そこに優秀な女子学生を集めたいという期待はあって当然であろう。事実、奨学金設置の議論を進めるなかでの反対論として、金城学院大学全体の奨学金ではなく、薬学部のための奨学金になるのではないかという意見も出たという。しかし、「薬学部のための奨学金という意識は全くありませんでした。あくまでも、金城学院大学で学びたいが学費負担がネックになっている学生の支援ということが第一でした」と、安藤剛入試広報部長は話す。極めて客観的な指標にもとづく選別の結果、薬学科や食環境栄養学科の合格者に支給対象者が多くなっているのだが、その奨学金を受けて入学する者が100% ではないという問題がある。どちらの学科も対象者の半数以下しか入学していない。即ち、国公立よりも低廉な学費という条件が提示されたとしても、国公立に合格すればそちらを進学先として選択する者が多いという事実がある。「薬学部の設立時期が遅いため、その実績があまり知られていないのが残念ですが、2011年度の国家試験合格率は92.4%であり、他校に引けをとるものではありません。今後、このことが多くの受験生に知られれば、いわゆる歩留りはもっと高くなると期待しています」と奥村学長は、ステークホルダーの理解を得るための時間の必要性を語る。もともと歩留りを重視して奨学金を設計したわけではないそうであり、従って、これは徐々に増えてくれればよいというところだろう。もう1つの問題は、2年次以降の奨学金継続率である。2011年度の受給者は、1年次終了時点の成績(GPA)が各学科の上位40%以内に入れば翌年度も継続されるところ、9名ほど継続が許可されず、そのうち5名が食環境栄養学科であった。上位40%がハードルになるとは想定しておらず、関係者は少なからず驚いたという。なぜ、食環境栄養学科に多いかといえば、入学後に履修が必要な化学、生物のうち、受験では1科目しか選択していないため、選択しなかった科目の成績が振るわなかったとみている。2年次に奨学金を受給できなくても、2年次終了時点のGPAが上位40%以内に入れば、3年次は再び奨学金を受給できる。挽回の余地は十分にある。これについての学長の話は、大変興味深い。「われわれとしては、管理栄養士になりたいという意欲を第一とし、そのために必要な教育は大学できちんとやることとして、入試で理科については、化学か生物の1科目の受験でよしとしてきたわけです。しかし、入試の得点は高く奨学金を受給しているものの、理科1科目受験者は大学に入って1年次に成果を出していないということが明らかになったわけです。入学後の教育をどのようにすべきかについてジレンマを感じます」。これは金城学院大学の問題にとどまらない、日本の大学、特に私学の多くが抱える問題の指摘である。入試科目を限定すれば、受験生はそれしか勉強しない。受験では成功しても、大学入学後の学習に支障がでるという状況の責任は大学にある。受験生が減ることを覚悟で入試科目を増やすか、入学後の手厚い教育でカバーするかという選択肢のなかで、現実的には前者を選択することが容易ではない以上、後者をどこまで充実させるかで対応する道しか残されていない。金城学院大学にしても、この奨学金を導入することで、あらためて問題の大きさに気づかされたのではないかと推測する。極めて短期に導入を決定した金城サポート奨学金であるが、その効果はどのあたりに表れているのだろう。まず、その効果としてあげることができるのが、志願者の増加である。図表2にみるように、一般入試(前期)試験の志願者は2010年度の1,891名から2011年度の2,555名へと大幅に伸び、2012年度も前年よりはやや減少したものの2,184名と上昇した水準を維持している。2011年度を学部・学科別にみると、一般入リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 201232課題は歩留りと継続率の向上志願者の増加と質向上に効果
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