ベースとなる3つの教育卒業後も続くキャリア支援摘する。学内の日常に協働性を組み込むことを意図しているわけではないが、実験系学科の共同実験をはじめ、家政学や理学系統での実践的な授業など、数人のチームで作業を上手く進める経験には事欠かない。「リーダーシップを発揮することも、共同作業をすることも、社会に出てからの就業力につながっていきます。結局は『自治』が大きな力になっていると思います」蟻川学長は続けて、「女子だけの環境では、本音で話すことができ、日常生活でもゼミでも、常に本音で話すことができる環境は、女性の能力を開発します」と言う。自分の意見を正確に、ストレートに伝えることの日常的な繰り返しが、社会で必要とされるプレゼンテーション力、コミュニケーション力の訓練になっているというのだ。このような教育環境と就業力との結びつきも女子大の利点の一つというのが、蟻川学長の考えだ。「女子大ではあらゆるところに女性が自立する環境があります。だから女子大には魅力があります、手前味噌ですが」日本女子大学のキャリア教育は、教養特別講義、キャリア形成科目、女性のキャリアに関連する副専攻の三つを特徴としている。全学部で必修の「教養特別講義」の原点は、創立者自らが手がけた講義「実践倫理」にある。「宗教、哲学、文学、社会学、自然科学と、いろいろな視点から講義を行い、人格形成に資するとともに、女性の生き方に示唆を与えるような奥深い講義でした。まさに今でいえばキャリア教育だと思いますね」(蟻川学長)現在、「教養特別講義1」は1年次の科目で、夏に軽井沢の学生寮で行われる「軽井沢セミナー」では、日本女子大学の歴史や建学の精神、教育理念・教育方針という自校教育や、大学で学ぶとはどういうことかの意識づけをしている。「教養特別講義2」は2年次と3年次の科目で、「現代女性とキャリア」をテーマに「女性と職業」「家族と女性の生き方」「女性と社会参加」など、六つの柱で講義が構成される。「講師は、卒業生を中心に、男女を問わず様々な分野で活躍している方を学外からお招きしています。女性が働くとはどういうことかをいろいろな角度から学生に示す、本来の実践倫理の講義を引き継ぐ伝統的なキャリア教育です」(蟻川学長)「キャリア形成科目」には、「仕事・結婚・わたし」「ライフステージと法」「国際協力・ボランティア論」などがあり、1年次から履修できる。就職して、結婚や出産、子育てを経て、どのように社会に復帰するかということも含めて、男性とは異なる女性のキャリアや生き方を学ぶことが目的だ。「女性のキャリアに関する副専攻」は、目白キャンパス(家政学部・文学部・理学部)では、「現代女性とキャリア連携専攻」、西生田キャンパス(人間社会学部)では、「キャリア女性学副専攻」が開講されている。名称や実施内容は二つのキャンパスで多少異なるが、いずれも現代女性としてのキャリア形成に役立つ多様な知識を身につけることを意図している。「卒業時の就職率の良さ、就職後の離職率の低さはこのような徹底した教育環境の賜です」結婚・出産・育児などによる就業の中断は、女性のキャリアの特徴といえる。蟻川学長は、「女子大学は、卒業したら終わりというのではなく、アフターケアも必要です。生涯にわたって女性が学び、社会で活躍することを支援するのが、女子大学の使命であり意義でもあると思っています」と語る。この観点で日本女子大学は、長年「生涯学習」に力を注いできた。まず、1909年に設置された長い歴史を持つ通信教育課程がある。大学に進まずに結婚する女性が多かった時代には「家庭に居ながら教育を受け、年月をかけても学位を取る」という通信教育は、女性の生涯学習としての必要度が高かった。現在は女子の大学進学率が高くなったため、そのニーズは減少しているものの、他大学の法学部や社会学部を出た女性が幼稚園教諭の免許を取りたいなど、資格取得のために学ぶ人が増え、現在約2,000名が通信教育課程に在籍している。近年、生涯学習の一環に加えられたのが、離職した既卒者の再教育・再就職プログラムである「リカレント教育課程」だ。文部科学省の2007年度「社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業委託」として採択されて同年9月から実施、事業期間終了後は生涯学習センターの下で続けられている。春と秋の年2回開講で、受講期間は1年間。各期20人程度の受講生のうち半分以上は他大学の卒業生という。年齢層で見ると、30代から40代が約7割を占める。授業内容は、金リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 201256
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