リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 2012■現在の授業料水準大学の経営に対する授業料と奨学金の重要性がますます脚光を浴びるようになってきた。高等教育該当年齢人口の減少とデフレの進行の中で、授業料をどのように設定していけばいいのか、どの大学にとっても極めて切実な関心事だ。授業料だけではなく、奨学金とりわけ大学独自の奨学金についても関心が高まりつつある。これまで別々に考えられることの多かった授業料と奨学金をセットにする政策が、アメリカ、イギリスなど主要国で広がりつつある。はじめに「現在の貴学の授業料水準」について、どのように評価していこうした問題を検討するためには、わが国の大学の授業料と奨学金が現在どのような状況にあるのか、そして、大学は今後どのような戦略を描こうとしているのかを明らかにすることが何より必要とされる。こうした問題意識から、リクルート『カレッジマネジメント』と文部科学省科学研究費「教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方に関する実証研究」研究チーム(研究代表東京大学 大学総合教育研究センター・教授小林雅之)は合同で、大学学長アンるかを見ると、「適正」と考えている大学が、82.4%と8割を超え、大多数になっている(図表1)。次いで、「高すぎる」が8.5%で、「低すぎる」は、わずかケートを2012年6月に実施した。回答校は497校で、回収率は66.8%であった(調査概要はP21)。調査にご協力頂いた大学学長に改めて感謝を申し上げる。第1章では、授業料水準、授業料減免、大学または学部独自奨学金について調査結果の報告を行う。第2章では、調査結果から見えた学費の現状と課題を整理し、学費をどう経営戦略に位置づけるか、個別大学への示唆をまとめた。3.6%にすぎない。設置者別に見ても、「適正」は公立大学で約9割(90.6%)、私立大学8割以上(84.5%)、国立大学約6割(62.1%)と大多数を占めている。しかし、国立大学では「高すぎる」と考えている大学が約4分の1(27.6%)を占めているのに対して、私立大学では6.5%にすぎず、大きな差がある。国立大学の授業料のほうが、ほとんどの私立大学より低いのに、国立大学で授業料水準について大学の授業料と奨学金の現状・4分の3が今後の授業料を「据え置き」・私立大学の約7割が「専門分野の近い私立大学」をベンチマーク第1章小林雅之 東京大学 大学総合教育研究センター 教授吉田香奈 広島大学 教養教育本部 准教授劉 文君 東京大学 大学総合教育研究センター 特任研究員『奨学金制度に関する学長調査』結果報告
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