武蔵野大学は2012年4月、臨海副都心に有明キャンパスを開設した。本部機能を移転し、2年次以降の4学部の学生約2300人が通学している。創立以来、文学部のみの単科の女子大学だったが、理事会には「“女子大学、単科大学、都心にない”の三拍子揃ったままでは、いずれ淘汰されてしまう」との強い危機意識があった。1998年以降、14年間で7学部を増設し総合大学化へ舵を切った。2004年には共学化も果たしている。2008年には、手狭となった武蔵野キャンパスから新天地、有明へ打って出ようと決める。「2キャンパス一体型」の将来像を描き、カリキュラム改革にも着手。初年次を武蔵野で過ごし、同大の学生としてのアイデンティティや学士力の基礎を養う全学部横断型カリキュラム「武蔵野BASIS」で学んだ後、2年次から各キャンパスへ分かれることとした。政治経済の中心地に近い有明には、政治経済学部、人間科学部(人間科学科)、環境学部、グローバル・コミュニケーション学部などビジネス系の学部が移転。文学部、教育学部、人間科学部(社会福祉学科)、薬学部、看護学部の文教・実習系の学生は、武蔵野で学ぶ。有明キャンパスのコンセプトは、「人・地域・世界とつながる」「環境配慮」「安心・安全」の3本柱。なかでも安心・安全面では、免震・耐震装置や、上下水道、電気、ガス、情報通信などのライフラインを地下空間に引き込む共同溝など、災害に強いキャンパスを自負する。「先の東日本大震災で液状化が起こらなかったことで安全性を確信した」と落合恒主な設備は、1号館に地上13階建ての教育研究棟。2〜5Fに教室、7〜9Fにゼミ室、10〜12Fに研究室がある。2号館には、1〜3Fに図書館、5Fに広く心理相談を行う「心理臨床センター」などを配置。3号館は学生の憩いの場で、1Fにフードコートと売店、学生ホール、2Fに地域に開放しているCafe&わたる企画部長は語る。レストラン「ロハスカフェARIAKE」、3Fに大教室を備えた。今後は有明の地の利を生かし、実践的な教育を目指す。例えば、ホスピタリティマインドの育成を目指す人間科学部や、英語・中国語・日本語のトライリンガルを育成し、中国人留学生も約100人在籍するグローバル・コミュニケーション学部は、就職先にホテル、エアライン、旅行会社などを志向する学生が多い。ショッピングセンターやホテルが集積し、アジアからの観光客も多い有明は絶好の学びの舞台である。企画参画型の産学官連携プログラムを充実させ、就職実績を上げることで、社会に向けて大学の知名度を上げていこうとしている。(取材・文/本誌能地泰代)明るく開放的な学生ラウンジ(左)とフードコート(右)。学生にとって食事をしたり友達と話したりできる憩いの空間だ。64リクルート カレッジマネジメント177 / Nov. - Dec. 2012環境学部の学生と雑誌『ソトコト』が「食の安全、健康、持続可能な社会」をコンセプトに協働開発した「ロハスカフェARIAKE」。中央には学生が間伐材で作ったシンボルツリー“ロハスの木”が。
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