カレッジマネジメント187号
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20若者を取り巻く労働市場の変化を前に、大学においてもキャリア教育が盛んだ。2011年には、大学設置基準改正により、大学には学生の「社会的及び職業的自立を図るために必要な能力」を育成することが求められるようになった。しかし、もしも大学で行われる教育がキャリア教育一色で染められ、しかもそれが単に「良い会社に入る」ための就職対策になっているとしたら、大学は就職予備校と大差なくなってしまう。単なる就職対策でないキャリア教育とはどのようなものか。学生の社会的・職業的自立を促すキャリア教育の意義を認めるとしても、それらは大学教育が担う幅広い人材育成機能とどう接合すべきか。キャリア教育の内容充実と大学教育における位置づけをめぐって、いま各地で試行錯誤が続いている。長年キャリア教育を推進してきたことで知られる京都産業大学(以下、京産大)も、そうした大学の一つだ。京産大のキャリア教育実践は実に多岐にわたるが、それらを「大学教育システム」の中にどう統合するかを常に問い続けてきた。そうした試行錯誤がいま、「日本型コーオプ教育」として一つのかたちを作りつつある。「コーオプ教育(Cooperative Education)」とは、大学・学校での学習と職業体験とを統合するものとして国際的にも注目を集める実践だ。実際にどのような実践が展開され、いかなる成果を上げているのだろうか。中川正明理事(学長特命補佐)と大西達也コーオプ教育研究開発センター課長にお話をうかがった。原点に位置づく産学連携京都産業大学は、「将来の社会を担って立つ人材の育成」を核とする建学の精神を掲げ、1965年に創設された。理学部と経済学部の2学部体制で出発し、その後すぐに法学部、経営学部、外国語学部が設置された。2010年に総合生命科学部が設置され、2014年現在、8学部9研究科を有する総合大学に成長している。来年(2015年)には創立50周年を迎え、それを機に文化学部に京都文化学科を新設する予定だ。京都にある大学としての強みが一つ加わることになる。2014年現在、京都市北部の緑豊かな丘陵地に広がる神山キャンパスに、大学院生を含めて約1万3,000名の学生が学ぶ。一つのキャンパスに文理すべての学部・大学院が集結した「一拠点総合大学」であることを強みに、学部間の壁をできる限り低くしながら全学的に事業展開できるように努めていると中川理事は語る。京産大における大学教育の特徴は、常に社会的要請を見据え、産学連携を通して学生を育てることを目指してきた点にある。荒木俊とし馬ま初代学長は、校名にある「産業」を世界標準の産学連携教育を目指す「日本型コーオプ教育」リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014京都産業大学CASE1

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