カレッジマネジメント187号
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44「キャンパスにいる学生の教育を高め、世界の学習者にもなんらかの教育体験を与えることのできる方法について、大胆な発想で検討をしてほしい。」マサチューセッツ工科大学(MIT)の教育の未来を検討するにあたり、L.ラファエル・リーフ学長が全学検討タスクフォースに諮問した内容である。この諮問に基づき同タスクフォースは、オンライン教育等の方法を用いてMITの教育をモジュール単位に分解し、学生がカリキュラムを自在に組み合わせられるような柔軟性を持つ教育を2013年11月、第一次報告として提案した。MITとともにMOOCプラットフォーム“edX”を開始したハーバード大学も、公式にではないが、「学外者への教育手段としてのMOOCだけでなく、キャンパス内の学生の教育に裨益するオンライン教育を検討したい」とペーター・ボル副学長が2014年4月来日時の講演で述べ、カリフォルニア大学バークレー校は、MOOCを開始するにあたり当初から、キャンパス内の教育向上のためと位置づけていたとする。“Coursera”と“Udacity”を設立する教員を生み出したスタンフォード大学は、オンライン教育の位置づけを各教員・部局の判断に委ねるとしているが、240あまり開設されているMOOCの多くはブレンド型教育等を通してキャンパス内の教育に利用されている。世界の人々の高等教育へのアクセスを約束したMOOCが、いつの間にか、キャンパス内の教育改善のツールとみなされるようになっている。今回は、オンライン教育を用いてキャンパス内の教育向上に取り組む米国有力大学の動きを紹介したい。MOOCでキャンパス内の教育改善を行うMITMITは米国有力大学の中で、オンライン教育をキャンパス教育に取り入れることに最も進んでいると言われている。オンライン教育に、教員毎・科目単位に取り組むだけではなく、オンライン教育を通して、MIT全学の教育の在り方を根底から見直そうとしているからである。上述のように、その検討の第一次報告が2013年11月に提出されたばかりである。教育のモジュール化が生む、柔軟なカリキュラム船守美穂 東京大学教育企画室 特任准教授リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 201421世紀の新たな高等教育形態MOOCs4

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