カレッジマネジメント187号
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60リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014価などに、多くの職員が疑問を感じている様子が窺える。人事管理の根幹ともいえる部分であり、経営層、管理職層、人事部門と職員の間の信頼関係が十分に築かれていないと見ることもできる。人事管理は、経営の要請と個人の期待・希望を如何に調和させ、全体のベクトルを合わせていくかが問われる領域であり、全ての個人の満足や納得を得ることはできないが、より良い解を見出す努力を続けること、職員の側にその真摯さが伝わることで、組織に対する信頼も醸成されていく。重要なポイントは、職員に対して、①どのようにすれば評価され、より良い処遇が得られるのか、②どのようなキャリアパスが期待できるのか、を示すことであり、③部署、職階、年齢、性別等を超えて広く学習の場を整え、④人事管理に関わる経営層・管理職層・人事担当者に対する教育を徹底することである。そのうえで、⑤職員個々の貢献と処遇の均衡が図られているかを節目ごとに確認する必要がある。職能資格制度で柔軟な役職登用を促進する一つ目については人事等級制度をどう設計し運用するかという課題が中心となる。人事等級制度は、当該組織における従業員の相対的な位置を明らかにし、処遇に繋げるもので、制度として確立し、運用ルールを明らかにすることで、人事の公平性を担保し、個々の従業員の成長や貢献を促すことを目的とするものである。人事等級制度には、能力を基準とする「職能資格制度」、職務の重要度を基準とする「職務等級制度」があり、最近では、職務等級を大括りにし、果たすべき役割に応じて等級を区分する「役割等級制度」も見受けられる。それぞれに長短があるが、ここでは職能資格制度について検討してみたい。この制度では、例えば、主務補、主務、主任、主事補、主事、統括主事、参事補、参事、統括参事、参与などの職能資格を設定、それぞれに能力要件と最短経過年数を定め、給与も基本部分は資格を基準に決定される。下位資格の最短経過年数を短め(例えば2〜4年)に設定することで成長を促すのが一般的である(下図参照)。この制度の利点は、給与が職能資格に連動していることから、処遇条件の変更を意識することなく、異動を柔軟に行えることである。また、ポスト制約から昇進機会が限られていても、昇格により処遇できるため、知識や経験は豊富でも組織を率いるのが不得手な人材を組織単位長以外の立場で活用できる。組織上、いかなる役割を付与するかなど工夫が要るが、一般企業では部下を持たず、担当部長や担当課長として単独で仕事をこなす社員は多い。その一方で、昇格運用が年功序列的になりがちという問題も指摘されているが、職能資格で序列や処遇の安定を一定程度保ちつつ、能力・適性に応じた柔軟な役職登用を可能にし、人事評価基準もより明確になるという点で、大学に本稿で考える職能給制度のイメージ最短経過年数職能資格参 与4年統括参事4年参 事4年参事補3年統括主事3年主 事2年主事補2年主 任2年主 務2年主務補組織単位長スタッフ職(部長層)事務局長◯◯部長(部長層)副理事部長(◯◯担当)(課長層)◯◯課長(課長層)課長(◯◯担当)部長代理(マネジャー層)マネジャー or 課長代理 etc.(部下を率いる場合と率いない場合がある)(担当職層)・対外的に肩書きが必要な場合は職能資格名称を使用・主任以上の上位資格者に下位資格者のメンターを務めさせ るなど、指導力を養成・役職は、部長層、課長層、マネジャー層の3階層とし、可能な限りフラット化・職能資格と役職の対応関係を緩やかにして、柔軟な配置・運用を可能とする・名刺等対外的な肩書き表示には役職または職能資格名称の使用も可能 

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