カレッジマネジメント187号
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欧米では、School-to-Workの仕組みとして、長期インターンシップが普及している。例えばイギリスでは、2011年時点の大学進学者数約50万人に対して年間約23万人と、およそ半分以上の学生がインターンシップに参加している計算になる。また、インターンシップの期間も長期間のものが多い。長期夏期休暇を利用して、3カ月(少なくとも1クォーター)の企業主導のインターンシップに参加するケースに加え、コーオプ教育※1(アメリカ)やサンドウィッチ教育※2(イギリス)など、大学主導でカリキュラムの中に就業体験を位置づけ、半年~1年間、フルタイムで参加させるケースも数多く存在する。なぜこのように普及したか。アメリカでは1960年代に、産業界から、大学で育成する人材像にミスマッチがあるので、地域や産業界と協働し、人材育成のカリキュラムとしてインターンシップを行う機運が高まった。ちょうど今、日本で言われていることと似ているが、アメリカの場合は国が教育戦略として積極的に予算をつけたことで、急速に拡大した背景がある(図表1)。さらに、カリキュラムの中に位置づける段階で、学内に地域企業や産業界との橋渡し役をする専門コーディネーターが置かれた点も重要だ。日本ではこうした機能が就職課やキャリアセンターとなりがちだが、アメリカの専門コーディネーターは高い専門性や職務経験を持ち、教員長期インターンシップをカリキュラムに位置づけるリクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014宮城治男NPO法人ETIC.(エティック) 代表理事日本におけるインターンシップの現状と課題、普及のための大学の対応策について、海外も含めたインターンシップ事情に詳しいNPO法人エティックの宮城治男代表理事に話を聞いた。1993年より、若い世代が自ら社会に働きかけ、仕事を生み出していく起業家型リーダーの育成に取り組み、400名以上の起業家を支援。長期実践型インターンシッププログラム、社会起業塾イニシアティブ、地域における人材育成支援のチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを実施。全国60地域に展開。11年より東北震災復興支援も行う。インタビュー欧米でインターンシップが普及した理由1100 0 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 図表1 アメリカにおけるインターンシップ拡大の背景 (校) (年) 導入大学数(全米) シンシナティ大学 Cooperative Education ハーマン・シュナイダー学長の理念 「理論と実践の反復が教育の質を高める」 ■大学と社会のギャップ ■求められる即戦力 ■高等教育のコスト増大 1970年初頭~ インターンシップの本格的な普及 インターンシップの社会的認知 高等教育報告書(1970) 「教育内容が実際の仕事と緊密な関係を持つべき」  インターンシップに対する財政的支援(1968~)  多額の助成金を大学へ   1968年高等教育法の改正    1980年代後半 全米大学の90%がカリキュラムとして導入 高等教育の民衆化 工学系などを中心とした専門分野における インターンシップ導入 学生が求人需要を上回る (雇用吸収力の低下)     ベンチャー企業の増加  NPO団体の増加・多様性 ベビーブーマー20代 産業化の波 専門技術と 訓練を求める声 シンシナティ大学(1906)導入 ノースイースタン大学(1909)導入 スプートニックショック ベトナム戦争 経済低迷(ブッシュ政権) レーガノミックス(軍拡) ベビーブーム 東京都市大学准教授 佐藤真久氏資料より 1900 1930 1960 1990

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