カレッジマネジメント187号
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量的・質的アプローチを行う必要がある。まずは学生の参加促進と企業の受入促進を行い、量的拡大を行うことだ。学生の参加促進のためには、インターンシッププログラムの目的や意義、効果などを学生が理解することが必要だ。そして企業の受入促進のためには、受入負担の軽減とメリットの設計、知名度の低い企業は自社の魅力発信などがポイントとなる。次に質的向上のためには、アメリカのコーオプ教育やイギリスのサンドウィッチ教育のように、インターンシップを戦略的にカリキュラムに位置づけ、教育的効果が向上するようなプログラムを構築することだ。なお、教育的効果の高いインターンシップには、図表5の1~4の要件が求められる。1企業、大学、学生の三者で実施目的が明確に共有されていること大学、企業、学生、特に大学で強い意志と、目的意識を示さなければ、長期インターンシップを続けることはできない。大学は実施目的や教育的効果を明確にし、企業も大学の希望だから受け入れるのではなく、何のために受け入れるか、受入目的を明確にする必要がある。学生もプログラムの目的を理解し、何のために参加するかを考えることが重要だ。2実施目的に沿ったプログラムが設計されていること実施目的に適切なプログラムを設計し、事前・事後研修が整備されていることなどが挙げられる。3企業の現場等でのリアルな体験の機会があること学生に、企業現場の一部を担う仕事を与えることである。各企業にとって、挑戦したい課題は必ずあるはずなので、それをインターンシップで解決できるというメリットの設計をきちんと行うことが重要だ。4学生の目標設定・フィードバック・振り返りが徹底されること事前研修で目標を設定し、実際の業務の中でPDCAサイクルを回し、事後振り返りでフィードバックを受ける体制をつくることだ。これらの要件を実現させるために、アメリカの専門コーディネーターにあたる、専門人材によるサポートが重要となる。専門人材に求められる実践的能力としては、①企業開拓、②ビジネスコンサルティング、③広報、④プロジェクトマネジメント、⑤研修の設計と運営、⑥学生カウンセリング、⑦評価などが挙げられる。企業と一緒に戦略を作り、学内(教員等)と調整しながら、カリキュラムに落とし込むなど、高度で多岐にわたる能力が求められるので、複数人で役割を分担する方法もあるだろう。インターンシップの教育的効果5では、こうした実践型インターンシップの教育的効果とはどのようなものなのだろうか。NPO法人エティックでは、内閣府・地域社会雇用創造事業の採択を受け、「ソーシャルビジネス(SB)・インターンシップ事業」において人材育成プログラムの開発・実施と評価活動を行った。全国14の地域事務局、延べ40以上の大学と協力し、約1カ月のインターンシップに参加した1500人の学生に対して、資質・能力(コンピテンシー)や内発的モチベーションがどのように変化したかを調査したものである。定量的なコンピテンシーが事前事後で大きく伸びたことに加え、注目したいのが定性的なモチベーションの変リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014特集 インターンシップの教育効果企業の現場等でのリアルな体験の機会3学生の目標設定・フィードバック・振り返りの徹底4実施目的に沿ったプログラムが設計されている2企業、大学、学生の三者で実施目的を明確に共有1前提条件として:全ての関係者にメリットのある場の設定専門人材によるサポートPDCA図表5 教育的効果の高いインターンシップ※実践と振り返りのサイクルを2回転以上繰り返すことで高い教育効果が得られやすい出所:2013年度経済産業省研究委託事業「教育的効果の高いインターンシップの普及に関する調査」よりPDCA※

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