カレッジマネジメント188号
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47バル学部を開設した。確かに、グローバルを付す学部・学科は、このところ増加しており、この新学部も産官学を挙げてのグローバル人材育成に対応したかのようである。しかしながら、上智の場合、総合グローバル学部は、10年越しの取り組みをようやく学部創設として結実させたのであり、必ずしも近年の政策動向に準じたわけではない。もっと遡れば、1970年代後半に東南アジアのボート・ピープルが日本に到着したとき、時のヨゼフ・ピタウ学長が募金の先頭に立ち、芳志を難民キャンプに届けたこと等が、1つの布石となったという。そもそも外国語学部は、欧米言語中心である。国際教養学部の前身の比較文化学部は、アメリカ流の教育である。従って、アジアをはじめとする非欧米社会への視野の広がりは、必ずしも強くはなかった。しかし、上記の頃から、世界への視点をアジアへシフトして教育プログラムとして構築する試みが始まった。外国語学部に置いたアジア文化副専攻、国際関係副専攻、附置研究所であるアジア文化研究所等が、上智の教育研究をアジアへ導いた。それをまとまりのある学部へという動きが生じ、実質的には3年ほどかけて総合グローバル学部開設にこぎつけた。アジアのみでなく、中東やアフリカまでを包含しての非欧米社会を対象にした、国際関係論や地域研究を行うことを目的としており、それが前二者の学部と異なる特色である。アフリカを対象にする教育研究は日本ではあまり聞きなれないが、上智大学がイエズス会というカソリックの教えを基底においていることを思い起こせば、その距離はぐっと近くなる。また、当該学部では3つの視座と3つの言語の獲得を掲げていることにも特色がある。その第1は日本を知ることであり、第2が全地球規模でのグローバルな視座を持つことであり、言語で言えばやはり英語は欠かせない。そして第3が地域の視点であり、とりわけアジア・中東・アフリカの一地域を選択し、その地域を知り言語を習得することが目標であるという。人間の生涯を考えるもう1つ、取り上げておこう。既設の学部・学科構成からすれば異色の看護学科を、2011年に設置したことである。これは、学校法人聖母学園との合併によるもので、当時は随分と話題になった。聖母学園の設立母体はカソリック女子修道会であり、イエズス会とのつながりは深く、30年ほど前から合併問題がたびたび登場していたという。しかし、医学部も病院も持っていない上智大学では、とても引き受けることができないという理由で断っていたのが実情であると、髙祖理事長は語る。そして再燃した合併問題であったが、最大の課題は、看護という専門職のミッションを上智大学のミッションとどのように擦り合わせていくかであった。ただよく考えれば、上智のキリスト教精神を表す“for others, with others”は、他者に寄り添ってケアをするという看護の精神とも馴染むものであり、また、心理、教育、社会、社会福祉からなる総合人間学部は、いずれも人間の生涯に関わる学問分野ということで、看護の理念を損なわずに一学科として置くことができると考えた。興味深いのは、看護という専門職にグローバルな視野を付与しようとしていることである。もともと修道会の関係で、アフリカの看護施設へ希望者を引率して看護の研修を行っていたこともあり、また、イエズス会系の大学であるジョージタウン大学やボストン・カレッジに看護学部があることから、選抜した学生の交流を実施したりと、少しずつ進めている。看護の場合、国家試験に合格することが第一の目的であるため、授業や実習の縛りが大変大きく、その制約条件のもとで何ができるかを模索中といったところであろう。しかし、「看護という仕事は日本に閉じられているのではなく、世界に出て活躍できるということを知ってほしく、そのための道筋をつけているところです。これも上智のミッションに時代の要請をぶつけリクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014特集 進学ブランド力調査2014大学に掲示されているポスター。新聞広告ではモノクロ版が使用された。図表1

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