カレッジマネジメント188号
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49ローバル化をするためのヒントを多々得たという。「グランド・レイアウト」の策定にあたっても、理事会は、120名前後の委員が参集する長期計画拡大会議を年間5回開催し、上智大学の将来に関する議論を重ねた。そこで提起された個別の案件については、その会議のもとに各種の専門部会を設置し、そこでの議論をまとめ、理事会に対して中間報告、最終報告を提出する。そして、理事会は、必要に応じて予備調査会を設置し、そこへの諮問と答申により、実施委員会を設けて実施に至るというプロセスを探るという方式で意思決定を図っている。一見回りくどいようにも思われるが、こうしたプロセスを経て全学的な合意形成が可能になるのだと、髙祖理事長は話す。ハイアラーキカルな組織を通じて意志の伝達をしようとすれば、どこかで誤解や曲解が生じる恐れがある。そこで、学長と副学長が、年間3回ほど、全教職員に対しての説明会を開催し、上智大学の針路に対する理解を得る試みをしている。さらには、2014年からの「グランド・レイアウト2.0」では、100周年を目指した「グランド・レイアウト」を一層充実し、特に上智大学としてのブランディングと、法人としての一体的なガバナンスとそのもとでのマネジメントに力を入れている。内部の風通しをよくすることで一体感を保持し、そのうえでボーダーを越えてのグローバル化というミッションの実現を図ろうとしている試みである。まだ、残された課題少子化により多くの大学が志願者の増減に敏感になっているが、上智大学の一般入試の志願者は漸増傾向にあり、当面の選抜に関する心配は何もない(図表3)。興味深いのは、一般入試による定員を増加させ、しかも志願者も増加するという状況が見られることである。これについて、髙祖理事長は、「各学部・学科の定員を少しずつ増やし、定員の1.1倍をとることを目指す戦略をとっています。そのため志願倍率は下がりますが、それよりも優秀な学生を確実にとることを重視しています。しかし、これは目的ではありません」と、断言する。大学のブランドを決めるのは、いかに社会で活躍する卒業生を送り出すかであって、世界が抱える問題の解決に貢献する人材の育成というミッションを遂行することが何よりも重要だという。そのためには、まだまだ課題があるという。それは、大学組織やキャンパスをさらにグローバル化することである。例えば、事務組織を日英両言語にして外国人の利便性を図り、また、教職員の意識をグローバルにすることで、教育研究のグローバル化を図ることがそれである。その反面で、留学生には彼・彼女達の慣習が全ての世界で通用するわけではないことを教えることも重要である。そのためにも、日本人学生と留学生との実質的な交流の機会を仕掛けることも課題としている。教育プログラムにおける様々なグローバル化の取り組みは、まず、キャンパスの学生生活からという思いが、こうした課題を意識化させるのであろう。ソフィアとは「上智」のもともとの英語であり、叡智を意味する。「叡智が世界をつなぐ(Sophia-Bringing the World Together)」とは創立100周年記念事業のコピーであったが、人間の叡智とは普遍であり、ボーダーを持たない。その意味では、叡智はそもそもグローバルなのである。新たなブランディングなどなくても十分なブランドを持っている大学は、強い。リクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014(吉田 文 早稲田大学教授)特集 進学ブランド力調査2014図表3 一般入試の定員と志願者の動向0 5000 2011年 2012年 2013年 2014年 10000 15000 20000 25000 30000 23468 17.29 26169 26566 28523 (人) (倍) 1357 1693 1693 1784 0 5 10 15 20 志願者 うち定員 志願倍率 15.46 15.69 15.99

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