カレッジマネジメント188号
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53こうして一定の成果が見え始めているなか、今後、大学全体としてどう戦略性を高めていく計画なのだろうか。振り返ってみれば、過去10年間における名城大学の諸改革は、2004年策定の基本戦略「MS-15(Meijo Strategy 2015)」を基盤に展開されてきた。MS-15では、長期ビジョンとして、総合化・高度化・国際化により、「広く社会に開かれた日本屈指の文理融合型総合大学」を実現することが目標に掲げられた。中根学長は、今後の名城大学が、MS-15に掲げた人材育成、研究推進、社会貢献に関わる基本的なミッションから大きく外れることはないと語る。課題はそれをどう具体化していくか、その仕掛けをどう機能させるかだ。例えば国際化だ。今どきの学生は内向き志向だと言われるが、大学が学生を海外に送り出す仕組みを十分に整備していないことこそ問題だと学長はいう。名城大学では2013年、国際化・グローバル化に向けた具体的な方向性を示すため、2018年度までの6カ年計画として「国際化計画2013」を策定した。理事長・学長の下に国際化戦略推進会議を設置し、新たに国際化担当副学長も置いた。2年後の外国語学部設置が国際化計画の中心的事業となることは言うまでもないが、ただそれを待っているだけでは不十分だと中根学長は考えている。名城大学では既に、グローバル人材としてのポテンシャルや意識を持った学生を社会に送り出す制度の整備に着手している。1・2年次学生向けの「海外英語研修プログラム」は、学生の海外送り出しを目的とした取り組みだ。2014年度から100人の学生に20万円の奨学金を給付し、6カ国15校に派遣する。外国語学部ができる2016年には給付枠を180人に拡大させる予定だという。また、3年次以降は各学部・研究科が専門に根差した国際専門研修(グローバル企業でのインターンシップや海外ボランティア)を提供する予定だ。さらに、こうした海外英語研修や国際専門研修を支えるため、天白キャンパスとドーム前キャンパスに、英語のネイティブ教員が常駐する「グローバルプラザ(仮称)」の設置を計画中だという。学生の自律的な英語学MS-15からMS-26へMS-15からMS-26へ習を促し、英語を読む・書く・話す・聞くという4つのスキルを向上させる機会を日常的に提供する仕掛けだ。こうした国際化の例にみるように、具体的な改革を促していくにはMS-15のような基本戦略が今後も必要になる。来年で一区切りとなるMS-15の次の10年を展望すべく、現在「MS-26(Meijo Strategy 2026)」を新たに策定中だという。名称が示すように、開学100周年となる2026年を目標年に定めた新たな戦略だ。経営と教学の下に、教職員による起草ワーキンググループを設置し、既に二十数回の議論を重ねて素案作りを進めている。MS-15ではトップダウン的に策定された面が強かったが、MS-26の策定は構成員のみならず、幅広いステークホルダーの意見をより反映する形で進めているという。このMS-26は近く発表される予定だ。開学100周年に向けてこうして見てくると、名城大学は目前の目標として開学90周年に向けて動きつつ、それと同時に開学100周年を見据えてさらなる高みを目指そうとしていると言っていいだろう。そのためにも、実効性ある改革を推進できる学内体制をどう強化するか。今政府や企業からは学長のリーダーシップや大学のガバナンスの必要性が言われ、スピード感をもった意思決定が課題になっているが、「特定の学長だけに力を与えるだけではだめだ」と中根学長はいう。名城大学では学長・副学長の打ち合わせを毎週行い、それを教学執行部会に提示し、さらに大学協議会で諮っていく。全学的な視点で物事を見ながら意思決定を図っていく大学運営が今後の課題になると学長は見ている。学生の8割を地元出身者が占める名城大学は今後、東海地区以外も視野に入れ、また女子の入学者も増やしていきたいという思いもある。それでも、まずは開学100周年を迎える頃の名城大学が、今よりもっと学生が生き生きと活動し、教職員が一丸となって目標を成し遂げていく大学となっていてほしいというのが中根学長の思いだ。学生の力を引き出していける大学へ。名城大学の次なる挑戦に期待したい。リクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構准教授)特集 進学ブランド力調査2014
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