カレッジマネジメント188号
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59リクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014いずれの大学にも課されているミッションを本学もまた負っていると強く自覚しています。グローバル社会とは、一方において、厳しい競争原理の支配する社会であり、他方では、言語や文化的な背景を異にする人々の平和的な共生なくして成立しない社会でもあります。すなわち、サバイバルのための逞しい精神力や高いコミュニケーションスキルが求められるのと同時に、成熟した人間性も求められます。私がイメージするグローバル人材像のひとつは、「心優しきグローバル教養人」ですが、根底にあるのは、批判的思考(critical thinking)と共感力(empathy)です。自分さえ良ければそれでいいという発想は、これからの国際社会、グローバル・ビジネスの世界では決して認められない態度と考えるべきでしょう。そうしたことも加味しつつ、優れたグローバル人材をいっそう多く輩出するために、本学は教育改革に乗り出しています。そのひとつが「世界教養プログラム」の導入であり、「世界教養学科(※4)」の開設です。「世界教養」とは、世界の多元性・多文化性に立脚したグローカル(グローバル+ローカル)な教養のあり方を意味しており、次世代における世界基準の教養ともいうべきものです。ヨーロッパ、アメリカ、スラヴ・ユーラシア、東南アジア・オセアニア、西アジア・アフリカ、東アジア・日本という6つの地域区分と文化、芸術、歴史、宗教から政治、グローバル・ビジネスにまたがる12のディシプリンを有機的に組み合わせた全72のテーマを設定。「世界教養プログラム」と名づけました。これを全学的な教養プログラムとして、2017年度より稼働させることを計画しています。外国語学部に2015年4月開設予定の「世界教養学科」の目玉も、この世界教養プログラムにあります。プログラムの稼働に当たっては、上に述べた72テーマという広大な教養の森をガイドする履修アドバイザー制度を導入します。学生はいずれかのテーマを深掘りしていき、最終的には卒業研究として成果をまとめることになります。さらに、世界教養学科では英語を基盤とし、英語で英語を学ぶことを徹底しつつ、「複言語プログラム」も設け、世界11言語を十分に学べる環境を整えます。英語が「外国語」でなくなる日に向けた戦略社会の変化とともに、外国語教育も著しく変化しています。日本において、英語を「外国語」と認識する時代は、あと10年~20年程度で終わるのではないでしょうか。そうなった時、外国語大学に求められるものは、英語の運用能力だけではないはずです。英語ではない言語、英語圏ではない地域という要望が当然高まる。言語のみならず、地域に強いという外国語大学の特性が、その際に生かされるのです。ご承知のように外国語学部には、ある地域における言語の専門家だけでなく、文化、歴史、宗教、政治のスペシャリストも揃っています。つまり、ひとつの地域を総合的に学べることが文学部などとは異なるのです。そうした本来の資源を生かし、学びやすく再構成したものが「世界教養プログラム」であり、世界教養学科なのです。そしてこれこそが次世代の外国語大学を象徴する教育システムであると、大いなる自信と期待をもちつつ、新たなスタートを切りたいと考えております。現時点で本学は、中部地区の大学の中ではある程度優位な状況にあるかもしれません。しかし、それを保っていくには、絶えざる進化以外に道はありません。どんなに素晴らしいものを作っても何年か経てば古臭くなり、新しいものの魅力には負けてしまいます。それを肝に銘じ、自らが変わり続けることを是としてこれからも突き進んでいきたい考えです。2018年度までの「アクションプラン」をほぼまとめ終わり、これから一つひとつ実践していきます。その中に私の念願であったオーケストラ創設も盛り込みました。大学の中に各々が誇れるものを見いだし、魂を精一杯込めていく。そのような営みもまた大学経営の醍醐味といえるのではないでしょうか。※1~3:朝日新聞出版発行『大学ランキング2015』より※4:2015年4月学科設置予定(届出中)

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