カレッジマネジメント188号
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61リクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014は、「夢の価値、暴騰」(図表1)。自分のやりたいことや夢を持ち、それに向かって努力することが重要なのだという考え方であり、「夢がないと、進学先は選べない」という声が多く聞かれた。そんな彼らの「夢志向」を大きく揺るがしたのが、2008年のリーマンショックだ。2009年の調査では、価値観が一転して「身の丈志向」に。不況の中、「夢を探している場合ではない」状態になったのである。好きなことを仕事にして人並みに生きる、ということに関心が移行していった。そして景気は悪化の一途をたどり、2011年には東日本大震災が発生。経済的な観点のみならず、社会的にも「この先何が起こるかわからない」という不安が増大。また、後述するが、自分たちの弱みとして「ゆとり教育」を自覚している彼らは、社会不安に対して「安定・保証」―つまり資格を取り、安定した職業に就くという「他人軸を重視」することで、社会不安を生き抜く武器にしたいと考えたのである。を取って行動することが得意な世代である。一方で、主体性や実行力といった、自発的にアクションする力は弱いと自覚もしている。シェアハウス型コミュニティ世代とは今、若者の間でシェアハウスがブームだ。シェアハウスでの人間関係をドキュメントしたテレビ番組『テラスハウス』が注目され、若者に人気のアーティスト「SEKAI NO OWARI」のメンバーは全員同じ家に同居。そのライフスタイルは若者の憧れとなっている。なぜ今、シェアハウスなのか。前述したように、彼らは身近で小さな人間関係を大切にする。何をするかではなくて誰とするかが重要である。自分も尊重されたいが、他人も尊重する。「自己」と「他者」の心地よいバランスが存在する場所、それが「シェアハウス」なのだ。以下、今回の調査で見えてきた、シェアハウス型コミュニティ世代の詳細を見ていく。そして2014年、彼らの価値感に2つの変化が大きな影響を与えている。一つは景気回復の兆し、そしてもう一つは「ゆとり教育」の終焉である。経済的にも好転の希望を持ち、「弱み」としてのゆとり教育から解放された彼らの中で、リーマンショック以降影をひそめていた「自分の夢」が回復の兆しを見せた。しかし、依然として「安定・保証」も重視する考え方も残り、どちらかにこだわるのではなく双方の“バランス”が重要だという価値観に至ったのである。また、コミュニケーションのあり方にも大きな特徴がある。SNS世代の彼らは「LINE」「Twitter」などのオンライン上で常に他者とつながっているため、身近な人間関係を非常に重視する。また、他者の情報や意見に対する受容性が高く、関係性をうまく維持しながら、自分の思いとの“バランス”高校生価値意識調査2014リーマンショック/3・11/アベノミクスを経てうまれた、バランス型価値意識2014年シェアハウス型コミュニティ世代●他者と生活を共にするが、個人の空間も存在する「シェアハウス」のように、身近な他者の情報や意見を受容し、関係性を構築しながら、自分の思いとのバランスをとって意思決定する世代。・景気回復への期待感から、将来観は回復傾向。・現状の生活に幸福を感じており、特に不をもたない。・将来については、「自分の夢」と、「安定・保証」のバランスを重視。・家族や友達、先輩など、身近なコミュニティの中で意思決定。・他者の意見や情報への受容力が高く、チームワークには自信を持つ。・一方で、主体性や実行力といった「前に踏み出す力」「考え抜く力」は 弱いと捉えている。① 将来観回復② ゆとり教育終了【背景】・やりたいこと・夢が回復の兆し・依然として安定・保証志向は残る・オンラインで常に他者とつながる・人間関係重視・受容性が高く、主体性が低い③ SNS世代2014年のキーワードは「バランス」

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