カレッジマネジメント188号
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78120万人の踊り場に止まっていた18歳人口は、4年後の2018年以降再び減少に向かい、10年後の2024年度には106万人と推計されている。また、本年7月に公表された厚生労働省平成25年国民生活基礎調査によると、平成24年における17歳以下の子どもの貧困率は16.3%となり、上昇に歯止めがかかっていない。学生を確保して存続していくこと、教育水準を維持・向上させていくことが一層難しくなることは明らかである。大学は過去に経験したことのない厳しい選別と淘汰の時代に突入しつつある。個々の大学の生き残りのためにも、高等教育に対する社会的要請に応えるためにも、改革は不可欠であるが、大学という組織を確かな変革プロセスにのせることは容易ではない。「概念ありき」から「誰のための何を目的とした改革か」へ次頁の図は教育改革を進めるにあたって重要とされている諸概念を、相互関係を含めて体系的に整理してみたものである。大学はその理念や教育目標に基づき、ディプロマ・ポリシーを定め、それを実現するためのカリキュラム・ポリシーを策定し、そのためにどのような入学者を求めるかをアドミッション・ポリシーの形で明らかにしなければならない。教育課程はカリキュラム・ポリシーに則って構造化・体系化され、教員は、授業を設計し、シラバスを充実させ、学習の達成度を判断するための基準を予め明らかにする(その教育評価方法の一つがルーブリック評価)とともに、教育能力を高め、授業内容・方法を不断に改善することが求められる。学生は、学習計画、レポート等の成果物、成績といった学習の足跡を示す関連資料を収集・蓄積(ラーニング・ポートフォリオ)し、自らの学習プロセスを振り返る。入学前から卒業後まで、学生の学習・生活・成長を一貫してフォローするエンロールメント・マネジメントの考え方を取り入れる大学も増えつつある。また、それを成り立たせるためにも、大学に関する諸データを収集・分析し、意思決定に資する情報提供を行うIR(Institutional Research)が不可欠とされている。個々の概念や全体の枠組みについては、人によって捉え方に違いもあるし、カタカナ言葉が氾濫する昨今の風潮への違和感や反発も根強いものと思われる。次々に登場するこれらの概念自体が、それらを活用して改革を推進しようとする教職員と一般の教職員の認識ギャップを広げ、議論が噛み合いにくい状況を生み出しているという面もありそうだ。概念ありきの進め方は、定義や効果を巡る議論に終始し、収斂しない可能性があるし、理解が不十分なまま、大学本部主導で進めようとすると、本来の目的が徹底されず、形だけ取り繕うことになりかねない。組織が大きくなればなるほど、全体を巻き込むことは難しくなる。大学という組織の特質を考えるとなおさらである。誰のための何を目的とした改革かを明確にし、全ての議論を大学を強くする「大学経営改革」多様化する学生を社会で活躍できる人材にどう育てあげるか吉武博通 筑波大学 大学研究センター長 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014厳しい選別と淘汰の時代に突入しつつある55

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