カレッジマネジメント189号
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20して学長直下に「エンロールメントマネジメント・インスティテューショナルリサーチ部(EM・IR部)」が設置されるに至る。その名称が示唆するように、新組織にはEMに加えてIR機能が付加されている。EMの理念を継承する一方で、IR機能強化の必要性が認識されていたからだ。EMとIRを一つの組織に包摂することで、学生の教育・生活全般に関する組織横断的な総合学生支援策としてのEMと、情報の蓄積と分析を戦略立案に接続するIRを有機的に結びつけることが目指された。このEM・IR部には現在、教員と職員が兼務で関わるとともに専任職員も置かれている。その構成は、副学長1名、健康科学部から2名、キャリア形成学部から1名、短大から1名(=相場教授)、キャリアセンターから1名、学生サポートセンターから2名、入試広報部から1名、学務企画部から2名だ。大学の全体性を担保するとともに、教職協働を重視した部員構成となっている。さらに、EM・IRに係る意思決定や学内周知のためのガバナンス体制も強化されている。図表1にみるように、「EM・IR会議」がEM・IR部の活動方針や内容を決定・指示する一方、「EM推進連絡会」が全学に対する関連施策の周知徹底と情報共有を担う。水野副学長は、EM・IRを全学的教育基盤として位置づける必要性から、ボトムアップを重視してきたと述べる。学生も個人個人で異なるし、学科も集団特性がかなり異なる。トップダウンでやるとうまく行かない面があり、むしろ各学科に立体的にやってもらう必要がある。学科レベルで自分たちでなければ課題提示ができないからだ。その意味で、学科を含む学内各部署から委員が参加して2カ月に1度開催されるEM推進連絡会は、EM・IR部と教育現場をつなぎ、意見交換を通して学内浸透を図る場として重要な役割を担っている。身近なデータの分析を成果につなげるそれでは、2007年以降の取り組みがもたらした内外への影響や成果をどうみているのだろうか。水野副学長は、EM・IRの理念の定着については一定の効果があったという。入試広報でも「京都光華のエンロールメント」を大学の強みとして打ち出し、学外にも知ってもらえるようになった。大学関係者からも一定の評価を得ていると感じるという。データの分析とそれに基づく改善の取り組みについても具体的成果が出始めている。例えば、退学要因とプロセスに関する分析だ。入学前の特性要因と退学要因との相関を取ってデータ分析を行い、学生個々人に配慮した指導やアクティブサポートにつなげている。退学リスク要因をランキングし、そのデータを分析してみたところ、学科ごとで退学要因の特徴には差異が見られたという。これを踏まえて該当する学生についての情報を各学科に提示し、入学直後の指導に活かしている。今後はその有効性を検証し、フォローアップの強化を図ることが課題だ。もう一つ、データ分析を通して、オープンキャンパスの開催形態を変えた。従来はいつ来ていつ帰ってもよい自由参加型だったが、当日の高校生の動きを分析した結果、高校生達の多くは朝来て昼に帰っていることが判明した。このデータを使って、オープンキャンパスの形態を、開始と終了の時間を明確化した誘導型に変えたという。こうした経験から、相場教授は「IRは大規模でなくてもできる。ちょっとしたデータがあって、こんなことを調べたいと思うところ、必要があるところから始めるのリクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014図表1 EM・IRの推進体制提案・報告統括指示・依頼報告・提案伝達・依頼報告・提案学生サポートセンター高大連携室キャリアセンター国際交流センターその他の部局・センター各種委員会(全学代議会系)学 科学 科学 科保健室学生相談室EM・IR部EM・IR会議EM推進連絡会学 長大学運営会議指示・依頼・提案統括

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