カレッジマネジメント189号
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22IR(Institutional Research)とは、学内の諸数量データを統合・分析し、そのエビデンスから大学経営の指針を得ようとするものであり、日本の大学でも徐々に人口に膾炙している。日本福祉大学の場合、2007年の夏に米国の大学4校のIRの視察(NPO法人GES主催、私立大学協会協力)に、現在の齋藤真左樹学長補佐・総合企画室長(当時は教育開発部長)が参加したことが契機となった。米国の大学では、組織の意思決定にIRが用いられ、そのためには客観的なデータに基づくPDCAサイクルが機能する必要性、各部署に散在しているデータの統合の必要性を知ったことが収穫であった。この視察報告を受けて、2008年度に現在の丸山悟理事長(当時は企画局長)を責任者とするIRO(IR oce)準備プロジェクトが設置された。この時期は第1回の大学認証評価を2010年度に受審することが決まったこととも重なる。大学認証評価にどのように対応するかはまだ模索状態であったが、エビデンスに基づく自己点検・評価報告書の作成と大学基礎データの収集は、IRO準備プロジェクトで検討されていた「日本福祉大学に必要とされるIR機能」とも深く関わることとなっていった。また、同大学は2001年度に通信教育部を開設しているが、当初からインターネットを通じた課題添削、科目修了試験を行い、学生の情報は一元的にデジタルで管理されていた。他方、通学課程では入試情報、学籍情報、履修情報、就職情報等の、一部のデータは各関係部署がそれぞれのシステムで管理しており、1人の学生の情報は各所に分散していた。そこで、これらを一元管理するデータウエアハウスを構築することが課題として浮上していた。学生に関するデータを学籍番号で統合すれば、あるタイプの学生がどのような学習をし、どのような卒業後の進路をとっているかをたどることができる。それらの分析をもとに、教育内容の改善、学生支援、就職指導、さらには学生募集等、大学経営に関わる意思決定に様々に活用ができる。このような機運があってIRの構築という発想に収斂していったのである。ただ、当初よりIRが成功する見通しがあったわけではない。米国型のIRが比重を置く、他大学への転学を防ぎリテンションを高めるためのエンロールメント・マネジメントは、日本の大学にそのまま適用しても意味がない。日本の大学であっても、設置者や規模に関して状況は異なる。つ分析と事業策定を分離した職員主体のIRリクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014C A S E3丸山 悟 理事長日本福祉大学齋藤真左樹 学長補佐・総合企画室長米国のIRから日本福祉大型のIRへ

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