カレッジマネジメント189号
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23まり、IRはただデータを収集して分析すれば済むものではない。それを、いかに学内で求められる課題に即応して統制していくかが必要なのである。独自のIRをどのようにして構築していくか、まだ国内の大学でIRを行っているところが少ないだけに、手探り状態であった。IR推進室と総合企画室の両輪こうした中、2009年にIR推進室を設置した。ここでデータの収集と分析を行う。ただ、IRはIR推進室で完結するわけではない。図表1に示されているように、従来からある総合企画室が、IR推進室での分析結果をもとに事業計画の策定、施策の提案などを行う。この2つの組織が車の両輪となって学内のIR機能を担っているところに、日本福祉大学の特色がある。IR推進室は各担当課室との連携によって学内データの収集・分析を行い、現状をエビデンスベースで明らかにする。その結果をもとに、総合企画室が今後の改革の方向性を考案し、理事長・学長会議に対して政策提案や調整を行う。こうした役割分担のもとでそれぞれの役割に集中するのである。もう1つの特色を言えば、IR推進室は教員組織から切り離された、事務局内に置かれた事務組織である。多くの大学では、IRはデータ分析を専門とする教員が担う。しかし、ここでは当初から事務組織、即ち職員主体の組織として設置した。というのは、IRを大学全体のPDCAマネジメントサイクル確立のために必要なものであるとし、大学の恒常的な業務の一環に位置づけていたからである。専任の教員を置いた場合、その教員が異動すれば蓄積したノウハウが継承されないことが懸念され、また、教員が行うIRは、往々にして分析テーマが研究的側面からの興味によって限定される。高度な分析によるオリジナルな知見を見いだすための研究的IRとなっては、恒常的な業務にはならないし、その分析結果の理解が誰にでもできるとは限らない。また、何らかの教育改善を図る際に教員間の連携が容易ではない場合には、事務職員が間に入り教員間の連携を促進する役割を担うことも必要となる。そのようなことを考えて、課長(設置当初は教育開発室長を兼務、現在は情報政策課長を兼務)1名、課員1名、職員待遇の研究員1名を置いてIR推進室を発足させた。当然のことながら事務局にも職員のローテーションがあり、IR担当者は数年で交代することになるが、事務局全体にIR的思考のできる人材を増やしていくためには必要だというのが、丸山理事長や齋藤学長補佐・総合企画室長の判断である。お二人とも、「IR推進室の職員と現場担当課室の職員が連携して分析を進める中で、IR的思考のできる人材の育成が可能になる。また、多くの職員がそれを経験することで、IRの重要性に対する学内の認識の度合いも高まっていくはず」と述べられる。IR推進室と総合企画室とを分離したもう1つの理由は、分析プロセスをオープンにすることである。データを収集・分析する組織と政策提案を行う組織が同一の場合、その政リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014IR特集 戦略的意思決定を支えるIR機能総合企画室<政策提案・調整>常任理事会理事会各種改革検討委員会学園戦略本部会議教員人事基本政策委員会教員人事計画委員会大学運営会議大学評議会※総合企画室長、大学事務局長は構成員各種全学関連会議学長会議学部委員会教授会経営中期計画教員人事教学(全学)教学(学部)IR推進室<データ収集・分析>執行役員会「人事部会等各種部会」理事長・学長会議※経営と教学の重要事項を日常的に協議・調整図表1 意思決定フローの起点としてのIR機能

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