カレッジマネジメント189号
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24策の意思決定に都合の良い恣意的な分析をしているのではないかという反応が、教学組織などから起こることも想定される。しかし、総合企画室とは別組織として設置し、分析プロセスに多くの教職員が関わることで、IRによるデータ分析の独立性や中立性、分析結果の説得力は高まる。車の両輪として機能させるための背後には、こうした配慮もあった。学生支援型IRの稼働2010年の大学基準協会の大学認証評価を終え、ある意味、IRの本格的な独自の活動が始まる。学生の入学情報、履修状況や成績、卒業後の進路等のデータに加えて、新入生アンケート、在学生アンケート、学生によるゼミ評価等の調査データを付加したデータベースを構築し、学生はどのような状況で学習に躓きが出るのか、それに対してどのような学生支援ができるのか、学生支援のためのIRに特化することを目標に掲げた。幸いなことに2010年には、文部科学省の大学教育推進プログラムに「教育の質保証に資する福祉大学型IRの構築」として採択され、活動に弾みがついた。この事業の目的は、学業不振学生―そこには発達障害等の個別支援を必要とする学生も含み―、その原因をIR推進室におけるデータ分析で探り、それに対して学習支援や生活支援等の幅広い支援策を構築することにあった。開始して2年目には、民主党政権の事業仕分けによる大学教育推進プログラムの打ち切りという思いもかけない事態に襲われた。しかし、開始したばかりの学生支援のためのIRをここで終わりにはできないと、経費の支援がない中で学内の賛同者を募り、教員を含めた学生支援研究会を立ち上げた。こうした苦難の中で独自のIRの構築を目指して活動を継続したことが、現在のIRの定着につながっていると言って良いだろう。大学での学習がスムーズに進まない学生は、大学の規模拡大に伴って増加傾向にあることは否めない。福祉のみを掲げた単科大学の時代と異なり、多様な学部が設置され6学部となった現在、学生数は増加し、意欲においても学力においても学生の多様化は進んだ。そして、当然ながら学習の進捗に躓きが出る学生も増加する。しかし、福祉を掲げる大学のミッションからすれば、そうした学生への支援は不可欠である。それは翻って、学生の卒業後の進路においてより良い成果となって現れることが期待されている。分析結果を利用するここでIRの分析結果のいくつかを示そう。図表2は、学生の朝食の摂取とGPA※との関係をみたものである。朝食をとる頻度が高いとGPAが高く、朝食を摂取しない学生のGPAは際立って低い。そして、図表には示してはいないが、朝食摂取の有無は、自宅・下宿の別と関連しており、明らかに下宿生で朝食を摂取しない割合が高い。これらから、下宿という住環境のために、自己管理能力の低い学生は学業の進捗が覚束なくなる危険性があることが想定される。下宿生が約50%を占める状況においては、この結果はゆゆしき問題である。もう1つの図は、喫煙経験とGPAとの関連をみたものであり、喫煙経験がある者のGPAが低いことは明瞭である。それ以外の生活習慣、例えば就寝時間等もGPAに関連していることが明らかになった。即ち、様々な生活習慣は、学業の進捗状況に影響を及ぼしていることが、エビデンスとして明瞭に示されたのである。では、それに対して、どのような生活支援ができるか、総合企画室による課題解決の策が講じられることになる。ある時は、社会福祉士資格の合格率において、履修のコースによる差異や模試の受験回数によって差異があることが、IR推進室から提示された。その時には、学生に模リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 20140.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 とらない (n=581) 週3日以下 (n=540) 週4日以上 (n=543) 毎日とる (n=1,249) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 喫煙経験あり (n=400) 喫煙経験なし (n=2,471) ■朝食摂取とGPAの関係 ■喫煙経験とGPAの関係 出典:「日本福祉大学 学習と学生生活アンケート2014年度」 図表2 アンケート結果 2.48 2.42 2.32 2.09 2.44 1.90
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