カレッジマネジメント189号
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26リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014大阪大学のIRは、広義では未来戦略機構戦略企画室が、データに基づく狭義のIRとしては同室内のIRチームが担っている。未来戦略機構は、大学全体で取り組むべき横断的な教育・研究を総長のリーダーシップのもとで進めるため、2013年3月に本格始動した組織である。その中で戦略企画室は、学内外の教育研究に関わる調査・解析、教育改革・新たな研究・グローバル化等に関する戦略の企画提言を行い、大学のマネジメントを支援する部門と位置づけられている。戦略企画室には13人の教員(うち4人は兼任)と5人の研究員(うち4人は兼任)が在籍し、意図的に組織を分割することなく、ミッションに応じて協力して業務に当たっている。なお、未来戦略機構長は総長が兼ね、戦略企画室長は企画・評価担当理事が兼ねることで、大学と直結した機動性を担保している。図は、戦略企画室における戦略企画・提言とIRシステムとの関係を示したものである。IRの立場からPDCAサイクルを構成するための0から12までのアクション(数字は時系列)があり、右下のデータを基盤とする狭義のIRの領域、左上の企画立案・実施推進の領域に分かれる。現在IRチームは、これまでデータはあるが十分に集約・活用できていなかったという反省を踏まえ、調査やデータ収集・データベース等の情報基盤の整備と活用(アクション0~6)に力点を置いている。このようにデータに専念できるのは、高等教育研究者を配した教育改革チームが企画・推進の役割(アクション7~9)を担っていることが大きい。同時に、IRを軸にした施策についてPDCAを「回す」(アクション10~12)役割にも、戦略企画室長や一部の教員が本部の評価・情報分析室を兼ね、積極的に関与する体制となっている。特徴的な取組としては、国際的な視点から教育研究の改革の推進を支援しており、学生経験についてカリフォルニア大学バークレー校のような海外の有力研究大学と共にベンチマーキングを行うSERU(Student Experience Survey in Research University)の国際コンソーシアムへの加盟をはじめとした一連の調査活動、学術文献DB等を活用した研究分析、組織の効率性分析、大学ランキングを含めた大学評価、国際化への対応や情報公開などを行っている。大阪大学のIRの理想は、大学内の各構成員に真の情報を基礎とした判断資料を提示することを通じて、大学のミッションの円滑な遂行に貢献することにある。今後、事務組織とのより一層の連携によって、データを基礎としたより効果的なマネジメントが全学的に実現できるものと考えている。(齊藤貴浩 大阪大学未来戦略機構戦略企画室 准教授)機動的マネジメントを実現する未来戦略機構戦略企画室の取り組み戦略企画室の戦略企画・提言とIRシステムとの関係 ・ 学生経験調査(含:SERU)の開発・実施 ・ 卒業・修了生調査の開発・実施 ・ 雇用者調査の開発・実施 ・ 学生の効果測定(国際化の取組等) ・ 関係者の意見聴取、ニーズ調査、効果測定等 2.調査実施 ・ 組織の教育研究活動の効率性の分析 ・ GPA関連での成績分布の分析 ・ 評価への各種指標の活用に関する分析 ・ 学生の動態分析(学生の学習行動の トレース、キャリアのトレース) 3.分析・提供 ・ Super Goalとしての 「あるべき姿(理想)」の具体化 ・ あるべき姿と現実とのギャップの把握 7.上位目標(Super Goal)策定 ・ 各種事業関係者へのフィードバック ・ 上位目標を達成するための計画の改善、 または新たな計画の策定 12. 新たな計画の策定 ・ ギャップを埋める方策の事業化 ・ 使用資源、利害関係者の特定と 事業計画(進め方)の策定 8.事業計画(Roadmap)策定 ・資金獲得等によるサポート 9. 実施 10.モニタリング 0. 学内データの現在把握 ・ DB整備・システム(基礎情報DB)構築 ・ 学内の他DBの相互関連性に係る調整 1.データベース構築 ・ 大学ランキングへのデータ提供 ・ 認証評価・法人評価等へのデータ提供 4.評価対応 ・ 大学データを基にした冊子の作成 ・ WEBページによる大学データの提供 5.情報提供 ・ 指標等のモニタリングを通じての データ把握による客観的評価の実施 11.評価 ・ 指標を精選して現状を提示 ・ 他大学とのbenchmarking ・ 強み弱みの把握(SWOT) ・大学外の環境変化の把握 (利害関係者のニーズ、新しい政策等) 6. 現状把握 戦略企画の担当領域 IRの担当領域 IR組織の新設事例【国立大学】<大阪大学未来戦略機構>
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