カレッジマネジメント189号
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29リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014しょうか。安西 1つ目は、グローバル化とともに起こる世界の“多極化”です。これまでの米ソ冷戦二極構造やアメリカ一極集中の時代に比べ、世界が多極化してきています。このため20年後には、多極化し複雑かつ厳しくなった世界の影響が、日本に浸透してくることを意味しています。2つ目は、少子高齢化がかなり進んでいると思います。しかし、子どもの数が少なくなるということは、若い人達にとってはチャンスが広がるとも考えられます。自ら力をつけていけば、好きな仕事を選び取っていける可能性が出てくるということです。求められる「主体性・多様性・協働性」小林 そういう社会ではどんな人材が求められますか。安西 私は、①「主体性」、②「多様性」、③「協働性」という言葉に集約されると思います。この3つの言葉は、高校生・大学生あるいは子ども達に贈る言葉であり、また高校や大学の教職員の方々にもぜひご理解頂きたい言葉です。そして実は20年後の社会が要求している言葉でもあるのです。これからの時代は、一人ひとりが独立して主体的に生きるということと、異なる背景を持つ多様な人達が互いに認めあって生きるということと、そういう人達が協力して生きるということ、この3つが必ず要請されます。少子高齢化・多極化世界が進むに従ってますます必要になるということです。 もっと踏み込んで言うと、よく高校や大学の先生方は、「うちの学校では自主性を重んじています」「本学はAO・推薦入試で多様な学生が入学しています」と言われるのですが、では世界のどこかで全く知らない人の中に一人で放り出されたときに、主体的に自分のやりたいことが本当にできるのかということです。多様についても、本当に多様な人達の中で学んでいるのかというとそうとは思えない。ご存知の通り、日本の大学は、学部学生の3%しか社会人がいないという異常な世界です。極端に言えば、同じレベルの学力で、同じような家庭環境(所得)で育った、18〜24歳ぐらいの特定の年代層の人達だけが一緒に学んでいるというのが、日本の大学のキャンパスの姿です。ですが20年後には、一般の高校生だけでなく、社会人や編入学希望者、海外在住者、留学生など、様々な背景を持つ多様な人たちが学ぶ世界が来るでしょう。20年後の多様性は今の多様性とは全く違うのです。小林 同質性の中での多様性ではなく、20年後は文化や言語、年齢など、背景が違った中での多様性、ダイバーシティがもっと進んでいくということですね。大学入学者選抜だけでない一体的な教育改革を小林 高校・大学・入学者選抜の一体的改革の必要性が言われていますが、具体的にはどのようなことが議論されていますか。安西 20年後の「新しい高大接続」を実現するためには、「高校教育」と「大学入学者選抜」と「大学教育」を一体的改革で進めなければ意味がありません(次ページ図表1)。 第1には高校教育の目標を持つことです。高校教育が、これまでのような大学受験ではない目標を持てるかどうかが大変大きなポイントだと思います。私は、一人で何でもできるようになるには、高等学校において大人になる準備をもっとしっかりやるべきではないかと思います。それは主体性・多様性・協働性ということの基礎をきちんと身につけるということです。 第2は大学教育の目標です。大学教育においては、「主体的に学ぶ力を本格的に身につける」ことだと思います。主体性とは、自分で目標を見つけて、その達成に向けて実践する力です。 しかしこれには、高校生の時点で既に自分で目標を見つけることができにくくなっているのではないかという課題も感じています。せっかく「僕は音楽がやりたい」と目標を見つけても、高等学校の教育方針の中では、なINTERVIEW
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