カレッジマネジメント189号
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46リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014電気通信大学2011年に大学設置基準が改正され、「大学は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むこと」が明記され、就業力育成は大学教育の重要な課題となっている。各大学が活動の方向性を模索する中、地域産業人材の育成や地域経済の活性化にもつながるような就業力育成の取り組みが注目されている。この連載では、産業界との連携や地元自治体との協働によって学生の就業力を高めることに成功している事例などを、積極的に紹介していきたい。今回は、2005年という早い時期から産業界とのつながりを生かしたキャリア教育に取り組み、「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」関東・山梨ブロックの幹事校でもある電気通信大学で、福田喬学長にお話をうかがった。高校から大学へのパラダイム変換に課題電気通信大学(以下、電通大)がキャリア教育に取り組み始めた2005年当時の課題認識について福田喬学長は、「工学系高等技術者への社会からの要請」をあげる。「高度知識基盤社会と文科省がネーミングした、ますます高い知識や技能が求められる社会の中で、工学系高等技術者という人材を考えたときに、今までのいわゆる学問ベース、下から積み上げていくだけの教育ではダメなんじゃないかということがあります。もちろん学問ベースは必要だけれども、社会というものを視野に入れて、自分との関わりをいつも認識しながら、あるいは認識に向けた行動を起こしな就業力を育成する連載 ⑳産業界との繋がりを生かした工学系キャリア教育の展開がら専門性を上げていく教育にしていくべきではないかと。この課題は今でもそれほど変わっていないと私は思います」福田学長が憂慮するのは、学生が高校から大学に進むときに起こるべきパラダイム変換が起こっていないことだ。情報の取り入れ方が非常にバーチャルで、ある種、漠とした社会認識の下に学生たちは大学に入って来る。それで専門性を身につけようというのは「ちょっと何かが足りないのではないか」と言う。そこで、入学後のなるべく早い時期に、将来就業しようとしている産業界の状況を認識しつつ、専門性に入っていくことをキャリア教育の軸に据えた。それによって学生の目的意識も高まり、専門についても「本当の修学」になるのではないかという。産業界の話を聞き、現場を見る「2004年に産学官連携センターの竹内利明特任教授と議論をして方向性を作り、翌2005年にキャリア教育をスタートさせました。その頃、理工系のキャリア教育というのは実はあまりモデルがなく、単に社会と接触させればいいというものでもないので、どのような教育体系を作ったらいいのか、非常に悩みました」最終的に落ち着いたのは、学生に産業界の人の具体的な意見を聞かせることと、早い段階で産業界の現場を見せる福田 喬 学長

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