カレッジマネジメント189号
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リクルート カレッジマネジメント183 / Nov. - Dec. 2013※平成24-25年度文部科学省先導的大学改革推進委託事業「大学におけるIRの現状とあり方に関する調査研究」の一環として実施リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014近年、IR(Institutional Research)という言葉を耳にする機会が増えている。この背景には、成熟市場である日本の大学において、高度な意思決定とスピードが求められていることがある。各大学のミッションを実現するために、どのような戦略や計画を立案・実行し、検証していくのか。こうした、意思決定に至るまでの学内合意をどのように構築するかも、大学の大きな課題である。わずか10年ほど前には、「教育は数値になじまない」ということが言われていた。しかし、現在では「エビデンスベースで検証することが重要」という認識が、かなり浸透してきたように思える。エビデンスベースの検証によって学内合意を取りながら、意思決定を進め、そのうえで学外のステークホルダーに説明責任を果たしていく、そうしたことがこれからの学校経営に求められているのである。もちろん、大学経営や教育研究の全てが数値で表されるとは思えないし、その必要もないであろう。しかし、10月からは『大学ポートレート』という形で、教育情報の公表が始まった。これまで、偏差値一辺倒で評価されがちだった日本の大学も、こうした教育情報が社会に公表されることによって、各大学の個性に基づいた多様な評価を得られる可能性が拡がったのではないか。その一方で、IRに対する過大な期待を感じることもある。言葉だけが先行し、中身については、まだ緒に就いたばかりという感も否めない。そのため、今回の特集では、「全国IR調査※」をもとに、日本の大学におけるIRの現状についてまとめていただいた。また、IRをより実質化している大学の事例、これから取り組もうとしている大学の事例もご紹介した。今回の特集をまとめてみて、重要なのは組織や名称ではなく、より具体的な経営課題が共有されていて、その課題解決のために数値的な検証が行われていることだと感じた。何もないなかで、組織を創り、漠然と数字を集めて、何が課題かを見つける作業には、膨大な人材と時間とコストがかかる。大切なのは、目前にある課題について、具体的な数値をもとに検証しながら戦略の方向性を決め、間違っていたらすぐに数値を見ながら計画を修正して、戦略を推進することである。厳しい経営環境だからこそ、そうしたスピードと効率性と学内での納得感(共有)が重要になる。日本においてIRという言葉はまだ定着しているとは言えない。しかし、そうした具体的な取組みから、経営戦略に資する形での新たな“日本型IR”というものが生まれてくるのではないだろうか。       (小林 浩 本誌編集長)L RESEARCH

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