カレッジマネジメント189号
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54本誌前号の特集「進学ブランド力調査」に象徴されるように、大学ブランドへの関心は高まり、ブランド価値やブランド・イメージを高めるための取り組みに力を入れる大学も多い。受験生や保護者に選択してもらえるか否かが大学の生き残りを左右する厳しい時代になったことがその背景にある。その一方で、大学はブランドを論じる前に、教育研究の質を高めることを徹底し、その取り組みや成果を広く開示することで社会に対する説明責任を果たすべきという考え方も根強い。公的資金への依存度の高い国公立大学の場合、説明責任が問われるのは当然であり、教育の質の保証や情報公開の充実は、国公私立を問わず全ての大学に求められている社会的要請でもある。他方で、地道な教育改善や特色ある研究を行いながら、注目度が低く、志願者が集まりにくい、あるいは学生や教職員が自校に誇りを持てないといった状況に置かれている大学も少なくない。後者の大学が自校のブランド価値を高めたいと考えることは十分に理解できる。これら2つの考え方は共に重要であり、ブランドや説明責任の表層のみを論じるのではなく、大学機能の根幹をなす教育研究や組織運営を含めて、トータルでその構造を捉え、あるべき姿を追求する必要がある。このような考え方に基づき、大学におけるブランドの意味を問い直し、ブランドを切り口に大学が為すべきことを検討したものが本稿である。ブランディングの起源は品質を保証するための商標ブランド(brand)は、「銘柄」や「商標」を表す英語の名詞であるが、動詞が「焼き印を押す」ことを意味する通り、放牧場で自分の牛を識別するために牛の脇腹に焼き印を押したことなどが、今日の銘柄や商標につながったと言われている。小川(2011)は、近代的な商業活動につながるブランディングは、中世ヨーロッパにおいて、商業ギルドが、品質を保証するために、商標(Trade Mark)を用いたのが始まりとした上で、現代的な意味でのブランドを「自社商品を他メーカーから容易に区別するためのシンボル、マーク、デザイン、名前など」と定義づけている。また、ブランディングを「競合商品に対して自社商品に優位性を与えるような、長期的な商品イメージの創造活動」としている。その上で、ブランド・マネジメントの現代的な意義として、①固定客の獲得、②品質保証、③流通との交渉力、④ブランド拡張、の4つを挙げている。ここでいうブランド拡張とは、ブランド・イメージを活用して関連した製品分野や新規事業に進出することを意味する。これらを基礎にした上で、ブランドの本質や大学における意味を掘り下げて考えるため、平成26年9月12日に開催された国立大学協会主催の平成26年度大学マネジメントセミナー「ブランド戦略の構築と実践」における2つ大学を強くする「大学経営改革」大学におけるブランド構築の本質を考える吉武博通 筑波大学 大学研究センター長 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014ブランドを切り口に大学が為すべきことを検討する56
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