カレッジマネジメント189号
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物語の体現者 六百年の歴史を持つ日本古来の伝統芸能である能楽を、今に伝える若者達がいる。國學院大學・たまプラーザキャンパスを訪れると、凛々しい着物姿の学生たちが迎えてくれた。能楽サークル「観世会」のメンバーだ。観世会は、能楽・観世流に伝わる謡と仕舞を実践している。代々能楽師の家系である観世流の武田文志氏を指導者に招き、日々稽古に励んでいる。現在17名の部員を統括しているのが会長の片柳志保さんだ。「ほとんどが大学に来て初めて能を始めた人ばかりです。先輩から後輩へ謡や仕舞の一つひとつを伝え、技術を学んでいきます」。そう語る片柳さん自身も中学・高校時代は美術部だったが、先輩たちの着物姿や仕舞に引き込まれ入部した。「1年生の夏合宿の時に、気に入っていた仕舞について先生にお聞きすると、その物語について詳しくお話をしてくださいました。ストーリーの深いところまで理解できるようになると、能の世界が広がり、そこから一気にのめり込んだ感じです。謡や仕舞は、物語を伝えるための表現方法であり、物語そのものの面白さを伝えることが核心なのだと思うようになりました」。能の舞台にはお囃子がつくが、観世会では、あえて楽器を用いない。声で伝える謡と動きで伝える仕舞だけにこだわり、あくまでも物語を体で表現する。先輩から学んだものを、自分のものにするために個人練習で技術を磨き、お互いに切磋琢磨してまとめあげる。その成果の一つとして、今年の「第6回名古屋名駅薪能・全国学生能楽コンクール」で優秀賞を受賞した。「コンクールの審査では、着付けや出入りの所作など、礼儀から身だしなみまで見られています。そういう中で受賞できたことはうれしいですね」。リーダーとして、上達の個人差も出やすい稽古を見守りながら全体の引き上げを図る工夫が必要だという。「昔から観世会は、本当に仲間意識が強く、個性的な人の集まりで、笑いが絶えない雰囲気。その中で私自身も精神的にも成長できましたし、そんな観世会がずっと続いてほしいと願っています。卒業後も稽古は続けていきたいと考えています」。日本の伝統芸能に魅せられた彼・彼女らが、「物語の体現者」として、これからも多くのストーリーを伝えてくれることだろう。 (写真・文/西山俊哉) 片柳 志保 さん (文学部史学科4年) 学生のリーダー 國學院大學 観世会 当代 当代 Vol.51 会長
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