カレッジマネジメント189号
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リクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014大学におけるインスティテューショナル・リサーチ(IR)が急速に関心を集めている。各種のシンポジウムだけでなく、IRコンソーシアムや評価IRフォーラムなど、ほぼ毎年定期的に開催されるものも出始めている。これらの会議の盛況ぶりはIRへの関心の高さを示している。こうしたIRへの関心の高まりの背景には、質保証や質の向上のための大学評価の実施、社会的責任(アカウンタビリティ)を果たすための大学の情報公開の制度化、大学ポートレートの創設、私学助成の要件のひとつとしてIRが加えられたこと、などがあげられる。さらにいえば、18歳人口の減少と公財政のひっ迫という厳しい環境のもとでの大学経営にとって、IRが不可欠な武器として注目されていることがあげられよう。IRは、もともとアメリカの大学で1960年代から発展したものだが、試しにアメリカの事例研究や論文を読んでも、「IRとは何か」は大変分かりにくく、IRについてイメージをつかむのは難しい。実は、このことは、アメリカでも同様である。IR研究者や実践者の間でもIRについて共通の定義や理解があるわけではない。その理由は、3つあげられる。第一に、もともとIRは実践的な活動としてスタートしたために、研究よりも実践が重視され、学問的な定義や研究などより現実の活動が優先された。このためIRについて、学問的用語や法律用語として定義されているわけではない。プラグマティック(実用的)なアメリカの考え方がよく表されている。さらに、第二に、より重要な理由として、IRが現在でもなお発展を続けていることによる(詳しくは参考文献を参照されたい)。IRの活動内容が常に広がっているために定義ができない。このこともアメリカの高等教育の常に発展を続けるダイナミズムという特徴を示している。さらに、第三に、IRの活動内容は、大学によっても異なる。大学の規模、設置者、ガバナンス(分権か集権か)、タイプ(4年制か2年制か)、環境(立地など)、ミッションや達成目標によって異なる。例えば、達成目標は、大学の強みと弱みに関連して立てられる。この強みと弱みも大学ごとに千差万別であるため、IR活動も異なることになる。こうしたIRの多様性はIRが文脈(コンテクスト)に依存しているためである。このこともアメリカ高等教育の最大の特徴である多様性を示す1つの例と言えよう。このように、アメリカのIRは、プラグマティズム、ダイナミズム、多様性というアメリカ高等教育の特徴をそのまま反映している。こうしたIRの特質のため、アメリカでも、教育政策関係者や大学関係者間でIRについて、共通の定義や理解が存在せず、絶えず「IRとは何か」が問われてきたと言える。しかし、そうはいっても最低限の共通の定義や理解がないとIR活動に日本でのIRへの関心の高まり1IRとは何か2小林雅之 東京大学 大学総合教育研究センター劉 文君 東洋大学 IR室日本型IR構築に向けて

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