カレッジマネジメント190号
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27リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015特集 学部・学科トレンド2015響を与える兆しが確認できた。例えば、これまで衰退傾向であった「経営」「法学」「商学」に代表される学科系統の復活があった。これまでは就職を確実にするために直接仕事につながる資格系の学科への偏重が明らかであった。しかし、リーマンショックで落ち込んだ就職内定率も年々上昇し、アベノミクスに代表される景気回復期待が就職状況をさらに良くするという期待感として高まり、就職の際につぶしの効く分野への志願者回復傾向が見られた。特に都市部にある有名国公私立大学にその傾向が強い(今回の分析は、全国・国公私立全体のトレンドのため、ローカル・小規模大学等の学科開発については違ったトレンドがあり注意を要する)。かたや、今回の分析対象ではなかったが、資格系の学科系統は、短期大学や専門学校などの2〜3年の課程で資格取得できる校種との競合関係がある。これは、奨学金の受給者が増加し半数を超える現状を見ても、景気の回復期待があるものの、実際の保護者の給与が現段階で上がっているわけでないため、より学費が安い短期課程への進学傾向があることを裏付けている。新たな傾向として就職期待による復活分野があるが、就職に直結する資格取得分野や短期課程への根強い人気が衰えていないことも忘れてはならない。次に、「社会課題解決型」の学部・学科開発の方向性が、今後の新たな兆しとして確認できた。少子高齢化やグローバル化が進展するなか、その社会課題を解決するために必要な学問内容、人材開発の方向性を新たな学部・学科開発の要素として盛り込む流れだ。社会課題は中長期における人材ニーズを生み出すため、短期トレンドだけに左右されずに新たな学部・学科開発が進められた結果といえる。生き残りをかけた学部・学科開発に必要な視座それでは今後に向けた学部・学科開発を検討するうえで、どんなことが重要になるのだろうか。7つのステップで学部・学科開発を進めるという筆者の考えは、162号で詳しく述べた。トレンドのみを追う学部・学科開発を行っても、トレンドにはライフ・サイクルが存在することから、参入した分野の学科はいずれ衰退期に入ることが考えられる。それを避けるには、常に募集ニーズに合致する改組をし続けなければいけない。また、短期的トレンドを見て学部・学科開発をしても、検討・申請・認可・開設までに最短で2年、そして完成年度までさらに4年の歳月を要するため、開設時と完成年度後の募集段階では既にマーケットが変化している可能性が高い。また、競争が激化している大学マーケットでは、各大学が同じマーケティング手法で、成功例の後追いの形で人気分野を増設している。そこには個性も差別化された独自性もないので、結果として都市部の大規模有名大学に優位に働き、二極化が拡大してきているのではないか。以上より、短期ではなく長期レンジでトレンドを俯瞰しつつ、社会課題を視野に入れ、競合に差別化された独自性を持つ学部・学科を開発することが重要と言える。そのためには、各校の「教育理念」、「教育目標・ビジョン」、「学校資本(能力)」の最大公約数からなる「独自性ある魅力」に重点を置いた検討が根幹になるべきである。「独自性ある魅力」の創造は、ライフ・サイクルからの脱却を意味する。そしてこれを学内で共有・浸透させ、学外にも広報する。学内外で認識されれば、本当に求めたい入学者を集めることができ、その大学の独自の教育を行うことで、社会に有用な人材を輩出することにつながる。その結果、その大学が社会に存在する価値が生まれるのである。2013年からのアベノミクスに代表される景気回復の期待、2020年の東京オリンピック開催に向けた国内経済発展の可能性・グローバル化の進展への期待の一方で、国内の18歳人口は2018年以降強烈な勢いで減少する。半数近くの大学が定員割れしているなか、新たな大学の新設や学部・学科設置等様々な計画が進んでいる。大学改革に着手しその成果が表れ、社会的な評価を得るまでに20年かかるというのが、これまで改革が成功した大学の事例研究からも明らかである。改革スピードを速めても最低10年はかかるであろう。18歳人口が再び減少期に入る2018年、そして東京オリンピックが開催される2020年までにどのような改革に取り組むかが、今後の各大学の将来を左右することになるであろう。
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