カレッジマネジメント190号
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35きる。トレンドというよりも、戦略的思考の産物だというべきだろう。改革を推進する意思決定プロセスそれにしても気になるのは、以上のような改革がどうやって意思決定されていくのかだ。岡田学長は、学長を中心に副学長や事務局長によるミーティングを週1回開催しているという(図表3)。公式な意思決定ラインには必ずしも乗っていないが、アイデアを出すところだ。独自の情報収集や他大学への訪問・見学を通してトレンドを常に把握しながらアイデアを作り上げていく。その後はさらに、同じく非公式の学部長懇談会での議論を経て、ようやく公式の意思決定ラインに乗せるのだそうだ。もちろん、こうして民主的な手続きを踏むため審議には時間がかかる。スピード感には欠けるかもしれないが、全学による意思決定を丁寧に積み上げることで、長年一緒にやってきているスタッフとは共通の問題意識が醸成されるようになっていると学長は説明する。その上で、公式の意思決定プロセスで重要な役割を担うのが「総合企画会議」だ。学長をはじめ、学部長・研究科長、事務部長、部署長、教職員ら約40名で構成され、毎月1回定例で開催されている。構成員には一人一票が与えられ、全員の総意に基づく意思決定が行われる。図表3にあるように、総合企画会議には教授会や各種委員会での審議結果も諮られていて、教学マターは大学評議会に、法人マターは法人理事会に送られる。議題によって大学評議会に議論するものと法人理事会で議論するものとに仕分けるのだという。確かにこうした手続きを踏む以上、意思決定には時間がかかる。ただ、それは大学組織では珍しいことではなく、社会からの批判もこの点に向けられることが多い。神戸学院の場合、その弱点を補完しているのが非公式なミーティングや懇談会だ。民主的手続きも尊重しつつ迅速な意思決定を実現するには欠かせない装置なのだろう。兵庫県は日本の縮図と言われ、150万都市の神戸もあれば日本海側には限界集落もあると岡田学長はいう。わが国が今後直面する課題をいち早く経験する県の一つだ。神戸学院の置かれた状況も決して甘くない。場合によっては定員規模の再考も視野に入れる必要がある。そんな危機感が、現状に先んじて手を打っていく組織文化を醸成しているのかもしれない。今後の課題と展望最後に、岡田学長に神戸学院にとっての今後の課題と展望をたずねてみた。一つは、大学としてのアイデンティティ維持だという。二つのキャンパスに分かれることで構成員の日常的な交流が減少してしまうことを学長は危惧する。例えば入学式のような、入学生2,500人が一堂に会するような場を活用して、総合大学としての強みや神戸学院としてのアイデンティティを感じられるよう、意識的に交流を図っていきたいという。もう一つ、学生を主役にしつつ、大学全体の教育力向上を目指したいというのが岡田学長の考えだ。そのために、学内GPともいえる「学生チャレンジプロジェクト」を来年度から始める予定だ。ゼミやサークルなど学生が自発的に取り組む活動を財政的にバックアップしていきたいという。さらに、グローバル・コミュニケーション学部の設置を契機に、そのリソースを活かして英語や中国語を副専攻として学べるシステムの導入を構想中だ。これからのグローバル社会を見据えれば、そして総合大学としての強みを考えれば、医療系学部の学生にも共通教育の中で語学力を身につけてもらいたいと学長は考えている。神戸学院の「未来志向」は今後も引き続きさらなる改革につながっていくに違いない。リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構准教授)特集 学部・学科トレンド2015大 学法 人理事会常任理事会図表3 神戸学院大学における意思決定プロセス大学評議会総合企画会議各種委員会教授会学部長懇談会学長ミーティング公式な審議機関非公式な調整機関

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