カレッジマネジメント190号
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37な分野でも必要なことであり、その点でも時代を読みつつ指導者育成が必要な領域に学部を新設したともいえるのである。学部設置の方法既存組織か新設かこの理念をどのように学部の設置として実現していくか。学部新設の方法は、2つの学部で対照的である。児童スポーツ教育学部のもとになったのは、もともとあった女子短期大学である。女子短大は、これまで中学校と幼稚園教員と保育士の育成を目的としていた。しかし現実問題、短期大学で中学校教員の免許は取得できても、今の時代、採用にまで到達することは極めて困難になっている。また、高校を卒業した女子の進学先としては、短期大学ではなく4年制大学が主流になって久しい。こうした状況を鑑み、短大を4年制大学とし、さらに共学化することで、マーケットを拡大しようとしたのであった。加えて、従来の各種の教員免許に加えて、新たに小学校教諭一種免許状の取得も可能な課程編成とした。幼少期からスポーツに親しませて丈夫な体を造るのはこれら学校教員の役割だが、それ以外にジュニアスポーツ指導員・障がい者スポーツ指導員もその役割を担うことができる。理念を活かし、かつ、志願者のマーケットも、卒業者のマーケットも拡大が見込めるということで、新学部の設置に踏み切った。実質的には女子短大のスタッフが中心になって新学部を立案したが、形式的には体育学部からの分離独立という形態をとり、既存の体育学部の教員も一部異動し、文部科学省への届出制度を利用して学部を設置した。他方、保健医療学部は整復医療学科と救急医療学科の2学科を設置したが、そのうち整復医療学科に関しては、実は、同一法人化下に柔道整復師養成を掲げる日体柔整専門学校が関連する教育機関として存在している。しかし、これをベースに新学部を設置したわけではなかった。むしろ、専門学校はそのままにして、それとは別形態の新学部をというのが理事会の方針であった。理事会では、専門学校はこれまでのところ定員は充足していることもあり、専門学校はそれとして別な形で拡充したいという意図があったという。従って、新学部設置はゼロに近い形から始めた。施設も専門学校のそれを利用するのではなく、横浜の青葉台にある健志台キャンパスに新設し、教員も一部は学内からの異動によったが、多くは新規募集・採用を行った。当然ながら届出制度ではなく、文部科学省の大学設置審査(認可申請)を受けてスタートを切った。それにしても2年度にわたる新学部設置を、決定してから開設まで1年から1.5年でやり遂げたそうだが、そのスピードは驚異的である。学生マーケット現状の要望と先取り今の時代、新学部の設置にあたって何よりも留意するのは、学生募集の見込みである。児童スポーツ教育学部に関しては、比較的安心していたそうだ。というのも、教員養成に関してはこれまでの伝統があり、都下の小学校の校長になっている卒業生は多い。彼らは在学中に小学校教員の免許が取得できなかったため、卒業後、玉川大学の通信教育などを利用して小学校教員になった人々であり、そうした層からの小学校教員の養成課程を設置してほしいという20年来の要望が強くあったからである。この要望に応える形での設置でもあり、わけても体を造ることをメインとしているため、今後の需要もリクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015特集 学部・学科トレンド2014図表1 Visionに基づく多彩な学問領域アスリート教育保健医療福祉行政機関ビジネス栄養グローバル女性の活躍指導者育成体育・スポーツを基軸とした社会に貢献できる人材育成

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