カレッジマネジメント190号
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38多いと判断した。他方で、保健医療学部は、教員養成を掲げていない初めての学部である。また、柔道整復師や救急救命士の資格取得が可能ではあるが、そうしたキャリアが高校生にとってどこまで魅力があるのか、疑問に思うところもある。それに対して、学長は「確かにその側面は否定できませんが、超高齢社会は確実に進行し、高齢者の健康問題に従事する人材に対する需要は確実に増えていきます。従って、今、すぐにというわけではありませんが、今後人気が高まる学部・学科であることを見越しています」と、中長期的なスパンで学生マーケットを捉えておられる。募集初年度にあたる2014年度は、同一法人下にある4つの高校に対して併設校推薦枠を設け、こうした領域へ高校生を誘い、それを誘い水として今後の志願者増に結び付けようと策を講じた。まだ、開設後まもない2学部であるが、図表2を見ると、学部増設は志願者の増加・志願倍率の上昇をもたらしていることが分かる。特に、児童スポーツ教育学部の2年度目の志願倍率は4.9倍であり、小学校教員免許が取得可能な課程に編成したことはポジティブに働いている。保健医療学部の場合は、志願倍率は1.5倍程度であるものの、推薦による志願者よりも一般入試の志願者が上回っていることは、1つの安心材料である。今後、一般受験者にどの程度アピールできるか、それが鍵である。卒業後の進路見込みとさらなる改革案このようにスタートした両学部であるが、学生の卒業後の進路については、どのような見通しを立てているのだろう。児童スポーツ教育学部は、小学校教員になる道を開いたことが学生募集においてメリットとなった。しかし、学部定員は200名である。その全てが小学校教員になることは無理な話である。そこで、児童スポーツ教育学科という1学科の中に、幼児教育保育コースと児童スポーツ教育コースを設け、このうち150名の児童スポーツ教育コースにおいてのみ、小学校教諭の免許の取得を可能とした。そして合わせて幼稚園教諭の免許の取得も可能な課程に編成し、たとえ小学校教員として採用が叶わなくても幼稚園教諭としての就職が可能なルートを設定した。学長はこれに満足しているわけではない。というのは、小学校教員としてのキャリアを歩みたいと強く願う学生を、就職が容易だとして幼稚園教員に進路変更させることのないように、対策を考えておられるのである。具体的には、大学院における小学校教員養成である。近年、学校教員の養成における修士化が議論されていることを踏まえ、それに備えてこの学部に接続する大学院修士課程を設置し、6年間かけて資質の高い教員を養成するプログラムを構築することを念頭においている。「30名程度が小学校教員として採用されれば」と目標は控えめではあるが、そのために6年一貫の教員養成課程とすることにも視野を広げている。また小学校教員の場合、一旦JICAの青年海外協力隊へ派遣し、海外ボランティアを経験させ、その経験を経て国際感覚を持った骨太の小学校教員として送り出すことも考えているという。そのために、カリキュラム外で、学生支援センターと国際交流センターが英語の授業などを開講し、JICAへの応募を進めようとしているそうだ。リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 20150 1000 2000 3000 4000 5000 6000 2014年 (定員1430名) 2013年 (定員1260名) 2012年 (定員1060名) 2011年 (定員1060名) 2010年 (定員1060名) 0.0 1.5 3.0 4.5 志願者 志願倍率 (人) (倍) 3259 3.1 3.3 3.8 3.8 4.2 3533 4067 5259 5386 図表2 志願者数と志願倍率

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