カレッジマネジメント190号
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39保健医療学部の場合、まずは、高校生に魅力のあるキャリアであることを知ってもらうことが重要であるが、卒業後の進路に関しては今のところ安心材料が多い。例えば整復医療学科では独立開業可能な柔道整復師の資格が取得でき、救急医療学科の場合は、取得できる救急救命士の資格に対する消防関係・病院関係からの需要は高い。しかしそれだけではない。保健医療学部の学生には医療関係の資格に加えて、日本体育協会の資格であるアスレティックトレーナーの資格を取得させたいと考えている。その資格取得は容易ではないが、スポーツ選手の応急処置に限らず、高齢者の健康づくりなど職域が確実に拡大しているため、そこにフォーカスをあてて、医療資格と合わせて取得させることで卒業生の活躍の場を広げるとともに、高校生にとって魅力的な学部にしていきたいと、学長は語られる。次なる改革伝統の体育学部にメスをいれるなぜ、トップアスリート輩出というこれまでのブランドにこだわらない矢継ぎ早の改革を進めているかといえば、その背後には2018年問題が危機感として迫っているからである。18歳人口が再び急減を始める2018年問題そのものはどの大学にとっても死活問題であるが、日体大のように体育学部単科の大学にとってはより大きな試練になると関係者は考えているそうだ。それまでに何とか手当てをしておくことが、日体大が生き延びる道だという。そのための次の改革は、体育学部である。伝統ある体育学部になぜ改革のメスを入れねばならないのか。学長は次のように語られる。「体育学部の定員は拡大を重ねて1060名にものぼります。健康学科・社会体育学科・体育学科・武道学科の4学科ありますが、これは1学科が1学部になってもおかしくない規模であり、どうしても学科ごとの特色を活かしたきめ細かい教育ができないことが課題になっています。従って、体育学部をいくつかの学部として改組して、それぞれ特色ある教育課程を編成することで飛躍を図りたいと考えています」特色ある教育課程の1つはこれまでのトップアスリートや体育教員の輩出であり、これを外すわけにはいかない。これをこれまで通りきちんと維持することが体育大学としての役割である。第2は、体育に健康を加味し、その対象を障がい者に拡大した内容の教育課程である。折しも同一法人下において、2017年に網走に特別支援高校が開設される予定である。ここでは自閉症の子どもを対象にスポーツに親しませ、国民体育大会(国体)やインターハイを目指すような生徒を育成することが狙いとされている。ここを実験校として、特別支援学校の教諭の育成に取り組みたいと考えている。第3は、武道の国際発信である。いうまでもなく武道は日本固有のスポーツであるが、だからこそ、それを国際的に発信して知名度を高める取り組みを、ここ20年程度実施してきた。具体的には、これまで武道学科の学生を3年次にオーストラリアやハワイに送り出し、そこで武道の実演をさせ、日本の武道の理解を促進するとともに、武道を専攻する学生を国際人として養成することを課題とし、異文化理解や英会話などもカリキュラムの一環として組み込んできた。この取り組みをもとに、国際スポーツ関係学部のような新学部の設置を構想している。先述の小学校教員の資格取得者のJICAへの送り出しと同様、ここでもJICAへの積極的な送り出しをしたい。そのために、2014年4月には国際交流センターを事務局として設置し、準備を始めている。2013・14年度の2つの新学部の設置は創立125周年事業の一環であり、次なる体育学部の改革もその一環として企図されており、学生数の確保という事業計画に位置付けられている。その点からいえば、これまで一般入試でも運動能力の試験を課してきたが、それを外すことでさらに優秀な全国の学生のマーケットに広く働きかけることも計画している。「体育」というと特殊な領域のように見えるが、実は指導者育成の1つのモデルケースであり、健康や福祉といった人間の生活にかけがえのないものと接続している。そこへの領域拡大が今後どのようにして実現するか、興味深い挑戦である。リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015(吉田 文 早稲田大学教授)特集 学部・学科トレンド2014
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