カレッジマネジメント190号
46/72

46リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015(自然人類学3位)、香川大学(胎児・新生児医学1位)、浜松医科大学(精神神経科学1位)、熊本大学(消化器外科学3位)など枚挙に暇がない。これらの地方国立大学の研究上の強みは、上田蚕糸専門学校(信州大学)や長崎医科大学東亜風土病研究所(長崎大学)等、戦前からの研究上の蓄積が現在でも確実に息づき、さらに発展した成果であることが多い。鍵は「蓄積」と「マネジメント力」このように分野ごとの上位10大学を眺めると、大学の研究上の強みを形成できるかどうかの鍵は、「蓄積」と「マネジメント力」であることに気づかされる。前述の通り、現在の研究拠点は場合によっては130年間にわたる投資による蓄積という足場の上で形成されたものが多い。これまで高等教育の世界では暗黙知のように認識されていた、長い蓄積に基づくそれぞれの大学の強みや特色が、今回のデータにより可視化されたと言うことができる。他方、前述のように金沢工業大学の黒田壽二総長の強力なリーダーシップは、同大学をわが国の大学教育のモデルとしてだけではなく、研究上の強みを多数持つ研究力の高い大学へと導いている。また、8年にわたって学部長を務めている前田健康教授のリードにより、新潟大学歯学部は10の歯学系の専門分野のうち9分野において10位以内に入る(図表7)とともに、高い科研費採択率を誇っている。研究上の強みをさらに発展させるためには、明確なビジョンのもと自らのエッジを明確に把握し、その活性化のための学内資源の再配分を確実に実行する「強いマネジメント」が不可欠であることを改めて痛感する所以である。3 3 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 (細目数) 京都大学 東北大学 北海道大学 東京大学 大阪大学 九州大学 神戸大学 国立民族学博物館 東京外国語大学 東京芸術大学 筑波大学 お茶の水女子大学 一橋大学 広島大学 早稲田大学 立命館大学 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立国語研究所 独立行政法人国立精神・ 神経医療研究センター 独立行政法人国立文化財 機構奈良文化研究所 4 4 6 9 15 日本福祉大学 0 2 4 6 8 10 12 14 16 ※2 赤い囲みは私立大学 (※1) ・人文社会系細目数:58細目 ・集計機関数:20機関 細目名順位環境モデリング・保全修復技術6自然共生システム4自然災害科学・防災学9脳計測科学2哲学・倫理学10文学一般8英語学5日本史9基礎法学9会計学10ナノ構造化学10素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理10数理物理・物性基礎9地質学9設計工学・機械機能要素・トライボロジー8通信・ネットワーク工学6計測工学10エネルギー学6神経生理学・神経科学一般6神経解剖学・神経病理学5神経化学・神経薬理学9ゲノム医科学3(旧)農業土木学・農村計画学4解剖学一般(含組織学・発生学)7医学物理・放射線技術10病院・医療管理学6呼吸器内科学9腎臓内科学6神経内科学5精神神経科学8麻酔科学6形態系基礎歯科学3病態科学系歯学・歯科放射線学7保存治療系歯学6補綴・理工系歯学6歯科医用工学・再生歯学6外科系歯学9矯正・小児系歯学6歯周治療系歯学1社会系歯学4今、大学・学術政策は大きな転換期を迎えている。厳しい財政状況にあっても「科学技術関係予算」は増加しているにも拘わらず、大学における知の創出力や人材育成力が低下し、学術研究に対する厳しい見方が止まないのはなぜか。そう感じる大学関係者は少なくないだろう。科学技術・学術審議会学術分科会(平野眞一分科会長)が2014年5月にとりまとめた「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について(中間報告)」は、この問いを率直に分析した。その結果、その最大の原因は、本来基盤的経費により長期的な視野に基づく多様な教育研究基盤を確保す転換期を迎える大学・学術政策5図表6 科研費(人文社会系)において採択件数1位となっている細目数図表7科研費細目別採択数上位10機関の例(新潟大学)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です