カレッジマネジメント190号
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68リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015「学校法人会計基準の改正について①(省令編)」を基に筆者整理)。これらの会計はいずれも、一つの取引を原因(財産の増減要因)と結果(財産の増減結果)の両面から捉えて記録していく「複式簿記」を基本としている。その複式簿記は、11−12世紀を起源とする大学と相前後するように、12世紀頃のアッバース朝のイスラム商人によって発明され、中世イタリアで発達し、世界に広がったといわれている。日本では福沢諭吉がアメリカの簿記教科書を翻訳した『帳合之法』によって、初めて単式簿記と複式簿記を体系的に紹介している。このような歴史を持つ「会計」であるが、日本の官庁会計は単式簿記に基づいており、予算に対する関心は高いが、決算は依然として軽視されがちである。そのような中で、法人化に伴い、国立大学法人や公立大学法人の会計に複式簿記が導入されたが、その意味や仕組みが役員・教職員にどれだけ理解され、法人経営に活かされているか疑問である。年度実績報告書に記載されている業務改善や財務改善に係る個々の施策が財務諸表にどう結びついているか不明なことが多い。学校法人については、個々に状況が異なるものと思われるが、日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」)で経営支援や融資審査の経験を有する山本雅淑大正大学教授は、「全般的な傾向として、私立大学においても、学内で会計の仕組みを知っている者は限られる」と指摘する。このような傾向は企業経営にも見られる。日本企業は売上高や業界シェアを重視し、一定の利益を確保し、安定配当を行えばよいとする考え方が長く続いた。バブルが崩壊し、経済のグローバル化が急速に進む中、1990年代半ば以降になってバランスシート(貸借対照表)、次いでキャッシュフローが重視されるようになった。国際会計基準に適合するように企業会計基準の改定が繰り返されたことも強力な後押しとなった。ガバナンスの強化が叫ばれ始めたのもこの時期である。前述の通り、会計の目的や仕組みは法人の性格によって異なるが、会計を理解することは、経営の成り立ちを理解することであり、利害関係者に知らせるべき情報とその意味を理解することである。従って、会計の理解なしに真の経営はあり得ない。次に、事業団『平成25 年度版今日の私学財政』を基に、私立大学の足元の経営状況を確認しておきたい(いずれも従来の会計基準に基づく)。平成24年度の大学法人539法人(556法人のうち集計率96.9%)の全体状況を見ると、帰属収入5兆9402億円、その中から5900億円を基本金に組み入れた後の消費収入は5兆3502億円となる。一方、消費支出は5兆6290億円であり、帰属収入から消費支出を差引いた帰属収支差額は3111億円と、過去最低だった平成20年度の445億円から回復している。帰属収支差額がマイナスの大学法人も34.9%(188法人)と、前年度の41.8%から大幅に減少している。帰属収入を100とした構成は、学生納付金53 %、補助金10%、事業収入28%であり、支出の構成は人件費49%、教育研究費36%、管理経費7%となっている。平成20(2008)年度から構成比に大きな変動はないが、平成10(1998)年度と比較すると教育研究費が30%から6ポイント上昇している。帰属収支差額比率が13%から5%に低下していることを考え合わせると、教育研究経費の増加を人件費等の抑制で補いきれず、消費収支に影響が及びつつある状況が見えてくる。大学法人の規模別に見た場合、学生数〜0.5千人(500人未満)、0.5 〜1千人の大学法人で帰属収支差額比率がマイナス、1〜2千人でも2.4%と全体平均の5.2%を下回っている。前出の26年度入学志願動向でも入学定員が小規模になるほど定員充足率が低くなる傾向が表れている。人件費比率は全体平均49.5%に対して、〜0.5千人の56.5%、管理経費比率も全体平均7.2%に対して、〜0.5千人12.8 %、0.5〜1千人9.3 %などの高さが目立つが、他の指標を見る限り、規模の大小による顕著な違いは見当たらない。小規模校であっても、経営効率を高め、強みや特色を発揮すれば競争力を維持・向上させることができる。「会計」の理解なしに真の経営はあり得ない教育研究経費の増加が収支に影響を及ぼしつつある

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