カレッジマネジメント190号
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69リクルート カレッジマネジメント190 / Jan. - Feb. 2015地域ブロック別に見た場合、帰属収支差額比率が全国平均5.2%を下回るのは、低い順に、甲信越-7.3%、北陸-0.8 %、九州1.6%、東海2.0%、北海道2.3%、四国2.7%、北関東4.0%、東北5.1%、上回るブロックは近畿5.5%、南関東6.1%、中国11.4%となっている。運用資産の蓄積度や財政上の余裕度を示す内部留保資産比率を見ると、全国平均26.4%に対して、中国40.6%、四国36.8%、北海道35.9%、東北30.2%など高いブロックがある一方で、甲信越19.4%、北関東22.0%、九州23.1%などはやや低めである。ただ、他のストック指標を見る限り、顕著な違いは見当たらない。これらのことを総合すると、規模や地域によってフローの収支には差が生じつつあるが、バランスシート(貸借対照表)に問題が表れるまでに状況が悪化している訳ではないことが分かる。前出の山本教授が指摘する通り、1986年度より実施された臨時的定員増(いわゆる臨定)でストックに厚みができたことも背景にあると思われる。その一方で、大学または学部単位での募集停止も生じており、経営が行き詰まるケースも見受けられるようになってきた。外部環境の悪化もあるが、「資金運用の失敗や過剰な設備投資などずさんな経営が行き詰まりの原因であることの方が多い」と、株式会社エデュース(16の学校法人の共同出資企業)の松本雄一郎社長は指摘する。その意味からもガバナンスの確立や経営人材の育成が急務である。目まぐるしく変化する企業の経営環境と違い、「18歳人口減少に象徴される大学の外部環境変化は緩やかであり見通しも利く」(松本社長)。そのことが、環境変化への感度を鈍らせ、決断のタイミングを見極めにくくする。また、企業活動はその全てが最終的に決算数字に結びつくのに対して、大学の教育活動の成果は貨幣額で表せず、その活動を支える経営の状況を財務諸表で表しているに過ぎない。大学で「会計」への関心が広がらず、理解が深まらない理由もこれらの点にあると思われる。しかしながら、18歳人口と進学率に依存する限り、需要は着実に縮小し、一方で社会的要請や競争激化により教育活動のための支出は増加を余儀なくされる。会計情報の開示や説明も一層の充実が求められるだろう。そのことに受け身で対応するのではなく、「会計」を戦略的に活用し、大学経営改革を加速させるという積極的な姿勢が不可欠である。そのためにはまず、複式簿記と会計基準を理解し、会計処理や財務諸表作成等の実務を正確かつ効率的に行い、財務分析を通して課題や解決方法を提案し得る大学会計のプロを育てていかなければならない。また、会計の仕組みと考え方、財務面から見た自校の経営状況と全国的な動向などを役員・教職員が理解できるように、簡潔で分かりやすい資料の配付や説明機会の設定など地道な取り組みを継続することも大切である。特に、役員・職員に対する研修は不可欠である。理事会・役員会等での決算報告において、当該年度のみならず過去からの長期推移(例えば10年程度)を示すとともに、全国的な動向やベンチマーク校との比較を加えるなど、変化を的確に捉え、経営状況を多面的に評価し得るよう工夫を施し、このような見方を定着させることも重要である。さらに、10年から20年程度先を見通す長期シミュレーションを行い、今のまま推移した場合、いつ頃にどのような状況が生じるかを描き出してみる必要がある。危機感を煽るだけでは具体的なアクションに結びつかない。将来起こり得る事態をリアルな形で理解することで、早い時点から計画的に対策を講じることができる。最後に、大学に相応しい管理会計の構築とコスト意識の醸成について考えてみたい。教育活動の現場がコスト管理で縛られてはいけないが、教育研究経費の増加が財政状況の悪化につながりつつある状況は見てきた通りである。これまで「大学のコスト」という場合、誰が負担するかに関心が注がれてきたが、大学自身が教育活動コストの適正な水準を考え、それに近づけるべく種々の工夫を行っていくことが重要になってきている。財務会計の枠組みだけでは、そのことに対応できず、IR(Institutional Research)と結びついた管理会計の構築が必要なのではないかと考えている。このことを含めて、本稿が大学における会計のあり方を考える契機になればと思う。「会計」を戦略的に活用し大学経営改革を加速

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