カレッジマネジメント191号
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10今後は、地域の創意工夫を生かしつつ、医療と介護を統合することになる。そして、都道府県及び市町村は、地域の実情に応じて、地域医療構想等に基づいてそれぞれ計画を作成することになる。だが、問題は、医療と介護をどう統合するかである。このプロセスは、イノベーションの展開に他ならない。医療と介護の現場の作業の改善というよりは、全体としての事業モデルと経営管理のイノベーションが最重要の課題になる。事業モデルは、統合主体(インテグレイター)を中核にした医療施設など介護施設の分散配置ということになろう。統合主体は、全体の経営について責任をもつのみならず、分散配置された現場施設の経営を指導する。現場の施設は、独立ベンチャーといった経営体が望ましい。内発的な創意工夫によってサービスの質を向上させつつ、効率化を進める。それにより、現場の作業担当者の賃金の引き上げが可能になる。現場の施設を大規模な持株会社の下に置くと、自立性が低下し責任の所在が曖昧になる。こうした展開にあたっては、人財養成が決定的に重要になる。統合主体のトップマネジメントの人財、現場施設の経営管理人財、地方自治体の福祉関連人財、産学公の調整人財、等々、多様な専門人財の育成が急務である。こうした人財育成は、まさに大学の責務である。学部や大学院の教育改革が不可欠になる。さらに、大学を核にしてヘルスケア・サービス産業クラスターが形成されれば、関連産業の立地が進み、地域社会に対する波及効果は一段と拡大する。まさに、新産業群を軸にした新しい地域社会の形成である。医療・介護に関する知的資源の集積が進み、多様な関連産業を引きつけることによって、「医療産業都市」へと進化する可能性がある。製造業の空洞化が進んだ地域において、企業の遊休資産・労働力を活用し、複数の大学が協力することによって、新しいヘルスケア・サービス産業クラスターを形成することが考えられる。こうした成功例として、アメリカにはUPMC(ピッツバーグ大学メディカル・センター)がある。「鉄鋼産業都市」から「医療産業都市」へとピッツバーグ市が転換したのである。UPMCは地域レベルで医療と介護を統合しネットワーク化した非営利法人である。売上高は1999年以降急速な伸びを示し、2013年には100億ドル(約1兆円)に達している。関連産業を含めた経済波及効果は217億ドル(約2.2兆円)と推定されている。医療サービスの他、子会社を通じて多角化しており、リハビリテーション施設、海外病院コンサルティング、画像診断、在宅ケア、高齢者施設、検査、臨床治験など多様な事業を行っている。また、医療保険の経営も行っており、加入者は140万人に達している。大学の努力により、ヘルスケア・サービスの産業化が進んだのである。大学クラスターの形成5前述の産業クラスターは新産業を創出する手段としてきわめて有効である。産業クラスターにおいても大学の役割は重要であるが、前述の福祉分野の他に未来志向型の産業を創出するためには、大学がもう一歩ふみ込む必要がある。大学クラスターの形成である。ここでいう大学クラスターとは、地域に立地する複数の大学の協力を密にし、新産業を創出するための組織化をいう。数多くの大学が集積しており、中核となる研究型大学が存在していることが望ましい。現実的な可能性を考慮すると、国の地方創生政策に関連して想定される中枢拠点都市に大学クラスターが立地することになろう。広域中枢拠点都市はまさに知的創造拠点であり、多様な知的資源の集積が不可欠である。そのコアとなるのが大学クラスターであり、企業の本社機能や研究機能、シンクタンクなどと連携し、全体を行政がサポートすることになろう。中枢拠点都市が広域を牽引するエンジン役となる。こうした中枢拠点都市が形成されれば、東京一極集中が是正されよう。広域中枢拠点都市は、3大都市圏を除くと、札幌、仙台、広島、福岡などということになろう。これらの都市には、すでに多くの大学が集積している。しかも、文部科学省リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015

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