カレッジマネジメント191号
14/62

14下げるという規程である。これは即ち、自分達の給与を下げてでも、自分たちがしっかり教育できる学生を受け入れ、社会的な責任を果たそうという決意の表れだ。苦しくても学生のレベルを下げないとの方針の結果、共愛学園前橋国際大学の学生募集の改善は偏差値の上昇を伴って進んでいった。学内でも「毎年、学生が優秀になっていく」「最近の学生っていいよね」といった意見が交わされているという。ちなみに、人件費抑制規程はこれまでに適用されたことは一度もないという。人件費抑制規程は、理事長、学長、全教職員が参加する「スタッフ会議」にて決定された。スタッフ会議は、四年制大学に移行する直前の短期大学時代から始まったもので、最重要の会議として位置づけられている。現在は年2回の定例会を基本とするが、開学後の3年間は毎月のように開催され、全ての議題を全構成員の話し合いの下に決めてきたという。また具体的な大学運営も、教員を主体とした委員会組織ではなく、教員も職員も全員がスタッフとしてフラットに参画する各種センターが担う。教員・職員の区別なくセンター長が選ばれ、特別な職位を持たない大学職員も、積極的に大学運営に対して発言する文化があるという。このような教職一体のガバナンスについて、大森副学長は「小さい大学なので、みんなで働かないと大学運営が進められない。その分、自分が自分の大学を動かしているという感覚が、構成員の中に共有されている」と話す(図表3)。「小さな国立大学」からの転換教職一体のガバナンスは開学直後からの改革であるが、はじめは混とんとする場面もあったという。「年配の教員、若手の教員、企業出身の教員、大学職員の声がせめぎ合う時もあった。毎日が異文化理解であった」と平田学長は開学当初を振り返る。「短期大学時代には、小さな国立大学をめざしていたのかもしれない。小規模で、リベラルで、アットホームで、学生・教員・職員の仲の良い大学であったが、大学としての方向性は、国立大学に比べて足りない部分を埋めていこうとしていた」と平田学長は話す。四年制大学への移行後は、構成員間の距離の近さを引き継ぎつつも、多様な意見がせめぎ合う中で、風土の転換が進んだ。“国立大学に行きたい人は国立大学に行くのであって、小さな国立大学には来ない。新たな大学を作らないといけない”との意識の醸成である。象徴的なのは企業出身の教員が与えた刺激だ。伝統的な大学風土に対し、企業出身の教員が“何よりも学生を見るべきだ”との声をあげた。例えば同大学では、アンケート等の学生の声を聞く取り組みが開学当初から実施されてきたが、その背景の一つには企業出身教員の声がある。新しい意見が受け入れられた理由について、大森副学長は「強いてあげるならば危機感だろう」と話す。募集状況を含め、初年度から大学運営上の危機が生じたことが、革新的な意見が大学運営に採用される土壌となった。学生中心の「ちょっと大変だけど実力がつく大学」グローカル、教職一体に加え、共愛学園前橋国際大学の風土を特徴づけるキーワードに、開学以来のモットーである「学生中心主義」「ちょっと大変だけど実力がつく大学」がある。学生中心主義は、学生をお客さんとして扱うことを意味しない。学生を大学コミュニティーの中心に置き、大学運営のパートナーとして位置づけることで、責任を持って学びと大学づくりに参加させる。これがモットーの意味するところである。「大学運営への参加という点では、第一期生から元気だった。一緒にいい大学を作ろうと、夜遅くまで残る学生もいた」と平田学長は話す。学生自身が責任を持って学ぶ仕組みとして、同大学の学修環境は、少人数教育を主体として構成されている。「受講人数で一番多いのは10名台のクラス。少人数なので、発言を求リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015図表3 教職一体ガバナンス:教職員がフラットに参画する大学運営戦略学長スタッフ会議企画運営会議各種センター(TS・MS合同組織)MS組織(MS:Management Sta)大学事務局 事務局長総務課教務学生課入試広報就職課企画調査室TS組織(TS:Teaching Sta)国際社会学部学部長・コース長教授会スタッフ会議・理事長、学長、全教職員が参加・大学の方向性を左右する最重要課題を審議各種大学運営センター・教員も職員も全員が一スタッフとして所属、 主体的に大学の運営に関わる・ TS/MS・職位などに拘わらず長を互選

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です