カレッジマネジメント191号
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26のようにして担保するのか。この両立が求められる。第1のここでしかできない教育内容は、「地域学」と「夢探究」として結実した。「地域学」は2年生対象の週3時間授業であり、島という地域を学び、地域活性化の課題を見つけ、その課題解決を目指すPBL(課題解決学習)方式をとる。島全体を教材とし、島の人々が先生であり、生徒の課題解決の協力者となる。この過程における生徒達の発案、例えば島の利便性の向上のための船やバスのダイヤ改正の検討が実際の改正に至った事例等、社会を動かす経験に結びつくことも多い。もう1つの「夢探究」は、1・2年生の総合的学習の時間をあててのキャリア教育である。自分は将来何をしたいのか、地域に出て様々な人から仕事について話を聞き、それをチームで議論してプレゼンテーションを繰り返すといった、こちらもPBL方式をとっての学習である。「特に島内の生徒は内向き志向の子が多く、自分の進路についても周囲の大人に言われたままに漠然と考えているケースが多いのですが、そうした子に進路の多様性を教え、考えさせ、自分で進路選択できるようにすることに狙いがあるのです」と、中村怜詞教諭は語られる。これらPBLの延長に、シンガポール国立大学で行われるグローカル研修がある。学習の成果を英語でプレゼンテーションを行い、同年代の学生と意見交換をすることは、生徒にとっては大きな挑戦である。地に足が着いたローカルなテーマを、広くグローバルな視野で考えることに挑める人材になってほしい。目指す「グローカル人材」には、そのような意図が込められている。確実な学力保証:高校と公営塾の連携もう1つの学力保証に関しては、学校内と学校外の2側面で対応した。島内の中学生がそのまま高校へ進学してくるため、生徒間の学力のばらつきは大きい。従って、学力別の個別サポートが不可欠になる。学校内に関しては、1年生より英語、数学、国語の習熟度別指導を行い、2年生以降は、国公立大学進学を目指す「特別進学コース」と、地域社会の活性化を担う実践力を涵養する「地域創造コース」とに分かれる。上述の「地域学」(2年次)が開設されているのは「地域創造コース」であり、このコースでは加えて「地域地球学」(3年次)が開設されている。県教育委員会、文部科学省、国交省等との交渉によって、生徒当たりの教員数を定めている標準法の改正にこぎつけたことで、教員の加配も実現し、学校内の教育体制は充実してきた。これに加えて、2015年度からは、1年更新の常勤講師として任用する教員を全国募集する。アクティブラーニングを含めて、離島から最先端のグローカル教育に挑戦したいという「脱藩者」によって、新たな高校教育のモデルを実現していくことが目的である。そのような教員がどの程度応募してくるかは未知数であるが、全国でも珍しい取り組みである。ところで、都市部であれば予備校や塾が学校外教育を担うが、ここではそのようなものはない。そこで新たに設置されたのが「隠岐國学習センター」である。町によって設立された公立の塾であること、高校と密接な連携をとり学校内外で生徒の学力の伸長を図っていることに特色がある。学習センターでは、月曜から土曜の18時から22時まで利用でき、このうち19時30分から21時30分までが、学力と希望進路に合わせた個別指導の時間である。毎月の費用が1万リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015図表3 魅力化プロジェクトの狙いと打ち手グローカル人材の育成グローカル研修地域学夢探究(キャリア教育)学力に合わせた個別サポートプロジェクト学習型進路サポート①教育内容の個性化・魅力アップ ②きめの細かい学習指導・進路サポート高校+公営塾の連携地域と連携して実施③島留学多様性の形成特色のある教育と、きめの細かい学習指導・進路サポートを目当てに全国から生徒が集まる海外地域地域外

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