カレッジマネジメント191号
35/62

35リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015「Only Oneの大学を目指そう」ということです。そこで2つの例を挙げました。ひとつは、長野県佐久市。ご承知のように、この地には東京大学医学部が入り、非常に効果的な地域医療を実践しました。脳卒中の死亡率が最高レベルであった佐久市で、減塩と野菜摂取を考慮した食生活の改善運動を推進。佐久市をモデルとした長野県は、平均寿命で男女ともに1位となったのです。もうひとつは、イタリアのボローニャ。この都市の象徴は1088年に創立した、世界の大学の原点とされるボローニャ大学。当初、この大学で学ぶために数多くの優秀な人材が国内外から集まってきました。この大学があることで都市が繁栄し、逆に、都市の繁栄が大学の発展に寄与した。都市と大学の最も理想的な、相互依存的関係がボローニャにはあると考えられています。これらを本学に置き換えて言うならば、本学の教育研究が川崎市麻生区において成果を挙げ、それが川崎市のモデルとなり、さらにそれが神奈川県のモデルとなる。ひいては、わが国全体にも好影響を及ぼしていくような、そんな「Only Oneの大学」を目指したいということです。また、将来を見据えた大学経営という観点から言い直すならば、これからの大学は、地域との関わりにおける長期ビジョンを持たない限り、生き残っていくのは難しいのではないかと考えています。地域との接点という意味では、本学は現在も多くのユニークな取り組みを行っています。例えば、川崎市教育委員会と連携した、学生と地域の子ども達がつくりあげる「ミニたまゆり」というイベントの運営や、Jリーグの川崎フロンターレのホームゲーム開催時に設置される「託児室」の運営等です。最近は、学長レベルでも地域ぐるみの協働的な活動が増えてきました。神奈川県では、私立大学や国公立大学の学長や県知事、市長などが年1回顔を揃え、地域を良くするための意見交換会を行い、私は多くのことをそこから吸収しています。日本の大学はいかんせん、未だに閉鎖的な関係性を克服できずにおりますが、例えばヨーロッパのエラスムス計画の大いなる流動性などを参考にして、もっとオープンに、大胆に交流していくべきだと私は考えます。国内の大学間交流も担保できないようであれば、グローバル競争に打ち勝つことは非常に困難ではないでしょうか。学長直轄事業で中長期戦略を検討本年1月に発表された人口動態統計によれば、2014年の出生数は100万1000人。18年後の大学経営は、その数値を真正面から受け止め、そのうえで具体的な戦略を描いていくことが必要になるでしょう。本学は現在、保育と福祉という、人生における最初と最後のフィールドに注力しており、中間の期間がありません。その年代の人々にも寄与するような学科、具体的には、運動やスポーツを学べる学科の設置を検討したいと考えています。しかし、その時期はまだ決めておらず、先生方には、常に新しい学科を考えて頂くようお願いしています。本学には、「学長直轄事業」というボードがあり、そこで本年4月に開学する大学院(人間学研究科)の準備を進めたり、カリキュラム改正を検討したりしています。新学科設置などの中長期的案件も、今後、学長直轄事業の中で、さらに具体的に練られていくことになるでしょう。学園創立90周年の記念事業として、2015年度に新校舎を、2016年度には大学のシンボルマークをイメージした交流施設「なでしこホール」が完成予定です。そこが地域の皆さんの交流の場となり、地域のシンボルともなるよう、これまで以上の地域貢献を目指していく所存です。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です