カレッジマネジメント191号
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37リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015ロセス・アウトカムの観点からケアの質を評価する指標の研究を進め、それに基づく報酬のあり方を検討するといったこともありうるだろう。ケアを必要とする人、専門職を問わず、より一人ひとりの持つ力・主体性を引き出し、需要の伸びを抑えつつ手ごたえを高める持続可能なモデルとそこへの転換が求められており、“あと何万人必要”という数字に過度にとらわれることなく、様々なイノベーションに真摯に取り組む必要がある。地域包括ケアシステムの推進に向けていかなるイノベーションに取組むに当たっても、ケアを取り巻く環境害と付き合いながらも、心身の状態に応じて生活の質が最大限に確保された状態へとその定義が変わりつつある。こうしたなかで、住み慣れた、あるいは本人が選んだ地域での自立と尊厳ある暮らしを実現する持続可能なモデルが模索され、地域包括ケアシステムにかかるいわばムーブメントが各国で続いており、日本でも今後目標とすべき政策概念として定着するに至っている。地域包括ケアは、「地域を基盤とするケア」と「統合ケア」という2つのコンセプトから成り立っているとされ、地域に根ざしたご当地システムを作っていくことが求められている。地域によって現状の人口構成や健康の状況、将来見込まれる人口構成と健康上のニーズ、フォーマル・インフォーマルの資源の状況が異なり、同じような状況であっても、住民の考え方は多様である。各地域で現状と今後の人口、健康、資源の状況を把握し、住民がどのように生きていきたいのか、どこでどんな最期を迎えたいのか、それは今の「まち」の延長で実現できるのか、実現できないとすると、それなりに納得できる生を全うするためには、どんな地域を作っていけばよいのか、現状と課題、ビジョンを共有することが出発点となる。地域包括ケアシステムを別の視点から捉えれば「ケア付きコミュニティ」作りということもでき(図表3)、首長のリーダーシップのもと、実態に基づいて住民が地域における最適を選び、実現に向けた戦略を立変化の理解が不可欠となる。高齢化が進み、疾患構造が変化するなか、虚弱な高齢者、複数の疾患や障害を抱えながら生きる方々の増加を背景とした「地域包括ケアシステム」の構築が、わが国のみならず、特に90年代以降の欧米各国におけるヘルスケア・ソーシャルケア改革に共通するチャレンジと言われている。とりわけ後期高齢期には、複数の疾患を継続的に発症しながら次第に死に至る軌道が知られており、寿命が延びるにつれて、病院で治す医療から地域でケアサイクルを支える医療への転換が求められることになる。人口構成の変化は、健康概念にも影響を及ぼす。かつては病気と認められないことが健康とされていたが、今は、病気や障75歳以上 65-74歳 15-64歳 0-14歳 2025年 2015年 2010年 13.2% 12.5% 60.7% 13.8% 13.0% 11.0% 58.7% 12.3% 18.1% 63.8% 11.9% 11.1% 65歳以上比率30.4% 出所:国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成24年1月推計)より作成 図表1 年齢階級別に見た将来推計人口の構成割合図表2 介護職員数(実数)の必要量の見込み(社会保障制度改革国民会議)出所:内閣府 第10回社会保障改革に関する集中検討会議 参考資料1-2「医療・介護に係る長期推計」より抜粋2011年2025年現状投影シナリオ改革シナリオ介護職員140万人213~224万人232~244万人

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