カレッジマネジメント191号
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38リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015案・実行し、モニタリングするという一連のマネジメントプロセスが重要である。求められるケアだけではない人材まず大学には、こうした一連のマネジメントプロセスの支援、地域マネジメントの担い手の育成を期待したい。前述の社会の変化に対応する人材育成という観点からは、WHO(世界保健機関)がまとめている今後の疾患構造に対応した新しいコンピテンシーも、参考になるかもしれない(図表4)。一見見慣れたものばかりが並んでいると思われるかもしれないが、例えば①患者中心のケアには、効果的なコミュニケーション、健康行動変容のサポート、セルフマネジメント支援、先を見越したアプローチ等が含まれ、②協働には、頻繁にいわれるようになってきた多職種多主体協働はもちろん、患者との協働、地域との協働が含まれる。病気や障害と付き合いながら地域で暮らす方々の生活の質を支える基盤とされているのは、情報・スキルを得て活性化された患者と先を見越して準備ができた多職種チームの生産的相互関係とされる。その底流には、改めて本人・患者が人生の主体でありケアの担い手であるという考え方があり、患者と専門職という顔を突き抜けて、共に同じ地域で暮らす生活者としてのフラットな関係性が織り込まれている。その人らしさ、生活の質を支えるというときに、改めて本人・患者と協働する、暮らしの質に関わる資源が散らばっている地域と協働するということについて、問い直される余地が大きい。地域に開かれた事業所づくりは、人材確保のうえでも効果があると考えられ、事業所のマネジメント上も重要である。また、適宜ICTも活用しながら、最初にも述べたように、継続的にケアの質と効率を高める努力、それを後方支援する研究も欠かせない。「高齢者の」「利用者の」「患者の」ケアの改善を手がかりとしながらも、目標は「全ての住民」が「よりよい生活の中での経験」を「共に創り出して」いけるまちづくり、地域としての「物語」を紡ぐことであり、ひろく地域のハピネスを地域住民が追求していくための地域主体のコミュニティーデザインという切り口から、直接処遇にかかる専門性を高めることのみならず、ケアと他の領域(例えば食、スポーツ、音楽…)をつなぎ、掛け合わせることができる人材も求められている。現在、国レベルでも介護・福祉人材にかかる様々な議論が重ねられているが、地域レベルで地域包括ケアシステムの担い手となる地域住民、様々な当事者団体、住民組織、専門職や事業者、教育訓練機関、関係団体、学校、企業等と自治体の参画により、ケアを必要とする人の生活像とそれを支える仕組みやサービス、そのなかで公的財源を使用する範囲を定義し、それぞれの現状の機能を棚卸ししたうえで、誰がどこまで何を担うべきかを徹底的に議論することも重要である。都道府県に介護・福祉人材に関する協議図表4今後の疾患構造に対応した新しいコンピテンシーとは① 患者中心のケア② 協働(パートナリング)③ 質の向上④ICTの活用⑤ 公衆衛生の観点出所:地域包括ケア研究会『地域包括ケアシステムの構築における今後の検討のための論点』図表3 「ケア付きコミュニティ」としての地域包括ケアシステムCさん Dさん ケアプラン ケアマネジャー Aさん Bさん 生活支援・福祉サービス すまいとすまい方 本人・家族の選択と心構え 課題事例の検討による地域の課題解決能力の向上 地域ケア 会議 地域マネジメントに基づく〈ケア付きコミュニティ〉の構築 スス介護・ リハビリ テーション 保健・予防 医療 ・ 看護 在宅医療 連携拠点 地域包括 支援センター

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