カレッジマネジメント191号
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42この連載は2012年に米国のエリート大学が大規模公開オンライン講座(MOOC)を開始したことから始まった。その後MOOCは米国では高等教育財政の逼迫事情と密接に絡み合いながら、オンライン教育の強化やコンピテンシー・ベースド教育の推進、反転授業等へと展開していった。米国以外の諸国では、米国に煽られたようなかたちでMOOCへの取り組みが開始し、未だに拡がりを見せている。しかし皮切りとなったCourseraやedX等のMOOCプラットフォームがメンバーを世界のトップ大学に限定したことから、これから漏れる大学や国は独自にMOOCプラットフォームやMOOCそのものを開発、提供しだしているため、その動きが見えづらくなっている。最終回となる今回は、こうしたほかの諸国の動きを紹介しながら、これからの高等教育の発展について考察したい。「Courseraにおいて中国語で提供されるMOOCのトップ4を国立台湾大学が提供している」。台湾を訪問した2014年6月、教育省及び国立台湾大学で、この誇らしげなセリフを聞いた。同大学の歴史学科の提供する「中國古代歷史與人物-秦始皇」と「史記(1)」、中国文学科の提供する「紅樓夢」、そして電気工学科の提供する「確率」がそれぞれ、受講者数2-4万人、中国からの受講者はそのうち1.5-3万人の登録を得たのだ。台湾では中国本土以上に美しい標準語が話されているという。こうした美しい標準語と、欧米で教育を受けた大学教員の学術レベルをベースに、中国語による優れたMOOCをたくさん作り、世界の中国語話者に発信したいとする。台湾でCourseraやedX等の主流のMOOCプラットフォームで開講できているのは、国立台湾大学だけである。しかし、台湾ではさらに多くのMOOCが現在開発されている。教育省がこのための競争的資金を用意したのだ。81大学327科目の申請があり、47大学99科目が採択された。コンピュータ科学のMOOCが9-10科目で一番多いが、それ以外に人文系やメディカル・ケア等10分野にまたがっている。教授言語は強制をしたわけではないがふたを開けてみたら全て中国語であった。しかしそれは世界の中国語話者への発信オンライン教育、ふたたび船守美穂 東京大学教育企画室 特任准教授リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015国レベルでデジタル学習を推進する台湾21世紀の新たな高等教育形態MOOCs最終回

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