カレッジマネジメント191号
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助委員会(UGC)が運営する教育開発基金(Teaching Development Fund)のなかに、「カリキュラムの中のITとe-ラーニング」という枠組みがあり、これで多くのe-ラーニングモジュールや、e-ラーニングを用いた教育方法が開発されている(図表3)。 最近では、これら大学ごとに開発されたe-ラーニング教材やインフラを共有することも検討されつつあり、デジタル化時代への対応が進んでいる。韓国はITが進んだ国として知られる。当然、e-ラーニングも進んでいるというのが一般的なイメージである。実際、高学歴社会であることもあり、大学生によっては物理的な大学とオンライン大学のダブルスクールをする者も少なくないと聞く。そのような韓国にも拘わらず、MOOCデビューは比較的遅く、日本の東京大学からさらに3カ月遅れての2013年5月にソウル国立大学校がedXに、そしてさらに遅れて同年10月にKAISTがCourseraに参加した。ちなみに北朝鮮は、これらより早い2013年2月に「核爆弾の作り方」と「大陸間ミサイルの作り方」のMOOCを2つリリースし、世間を騒がせている。(なお北朝鮮のものは長波ラジオを使用しているため、これを監視するにはまず長波ラジオの受信機を開発する必要があるというオチまであったらしい)。世界のエリート大学によるMOOCへの参入の遅れた韓国であるが、現在、韓国政府主導で、“KMOOC”というMOOCプラットフォームの開発が検討されている。韓国放送通信大学校が中心となり、基本的には韓国国内のトップ大学によるMOOC配信が検討されているようである。一部の科目については英語、中国語、日本語による発信も想定されている。一方で韓国には韓国の教育情報化を推進する政府機関、韓国教育学術情報院(KERIS)の運営するKOCW、ソウル国立大学校が篤志家からの寄付を得て学外にオンライン教育を提供する“SNU-ON”等があり、これらとの関係はこれから整理していく必要がある。また、KAISTは独自予算で“KOOC”というプラットフォームを設立し、ほかの韓国の大学にも参加を呼びかけることをも検討しており、韓国国内はMOOCやオンライン教育プラットフォーム等の乱戦状態だ。韓国政府はまた、ASEAN諸国を対象に、「ASEANサイバー大学プロジェクト(ACU)」の開発・運営も支援している。これは2009年にASEAN-韓国サミットの場で発案され、政府合意に至ったもので、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム等のCLMV諸国を中心としたe-ラーニングの能力開発と、韓国とASEAN諸国との連携強化を目的としている(図表4)。韓国が予算とプラットフォームを提供し、その他の諸国がコンテンツを提供する。またその間、各種関連のワークショップやセミナーを行い、能力開発を促進する。プロジェクト自体は2012年に開始しているためMOOCという名はついていないが、コンテンツがACUメンバー国内で共有されることを考えると、MOOCと同じ発想によるといって過言ではない。ちなみにこのACUのプラットフォームの開発・運営は、ソウル・サイバー大学が担っている。韓国は遠隔教育大学として、放送通信大学とサイバー大学があり、前者は所謂伝統的な国立の放送大学であるが、後者は2001年に生涯教育法に定められた「遠隔大学形態の生涯教育施設」、そして後に、大学院の設置も可能とした2009年に高等教育法に追加された「サイバー大学」を根拠として運営される、私立の大学である。約20のサイバー大学、計250程度の学科が設置されている(図表5)。韓国のサイバー大学については、その教育の質について、問題が指摘されることもある。訪問した2つのサイバー大学のうちの一つである韓国崇実サイバー大学は、雑居ビルのなかに事務局と撮影施設等がある程度で、政府からの補助もブランド力もなく、一方で20ものサイバー大学が競争しており、苦しい戦いを強いられていると苦言していた。その一方で、ACUの運営も行うソウル・サイバー大学は、韓国に45リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015重層的にe-ラーニングを展開する韓国■ 目 標:加盟国のe-ラーニングに関わる能力開発韓国とASEAN諸国との連携強化■ 参加国: カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ■ メンバー機関:カンボジア工科大学 ラオス国立大学ミャンマー工科大学 ハノイ科学技術大学■ 実施機関: ソウル・サイバー大学■ 事務局兼拠出国: 大韓民国ASEANサイバー大学(ASEAN Cyber University Project)図表4 ASEANサイバー大学プロジェクトの概要出典: ACU Projectホームページ(http://www.aseancu.org/)
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