カレッジマネジメント191号
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53リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015サービス創造学部は、学問から学ぶ・企業から学ぶ・活動から学ぶという「3つの学び」を掲げた。「企業から」に関しては、学長のトップセールスにより、「公式サポーター企業」の協定を50社以上と結んだ。講義への講師派遣、インターンシップ、集合実習の受け入れなど、非常に密接な関係を作っている。「活動から」の例としては、地元の千葉ロッテマリーンズと提携して、球場のアレンジ、チアリーダーの派遣、イベントの企画などに学生が携わっている。企業から・活動から学ぶ際、学生は自ずとキャンパス外へ出ていき、学内では得られない様々な体験をする。「就職の時、私はこんなことをやったんだってストーリーをきちんと語れば、就職に受かるのです」。第1期生卒業の2012年度、翌2013年度と2年連続で、サービス創造学部の就職率は99.3パーセントという高水準に達した。人間社会学部の場合、メガトレンドはこうだ。「現代社会で、人は傷つきやすく弱くなっている。地方は空洞化する、家庭は崩壊する、病人は蓄積する、税金は上がっていく。こんな不安を乗り越えて生きていくという難問を、商科大学として、民間のナレッジとスキルをもって解いていく学部を作ろうと」。島田学長と朝比奈学部長が議論の末に新学部のコンセプトとして打ち出したのは「われわれが助けるのは家族です、コミュニティーです、医療福祉機関です」というもの。家族支援とは例えば健康づくりであり、コミュニティー支援とは「お金をかけない観光」だという。「そういうノウハウを身につけて、田舎で生活する学生を、首都圏の大学である千葉商大と地方とで循環させていきましょうと。そのために学生を連れていって、田植えを手伝ったりしながら田舎のエトスを学んでね、その土地を愛するようにしなきゃいけない。これも一つの就業力なんだよね」。医療福祉については、会計や経済を専門にしつつ、介護の国家資格も持っている人材を輩出したいという。「大手の医療福祉グループの代表が言うには、国家資格を持つ介護福祉士はもちろん大切だけれど、一番不足しているのは、経営スタッフだというんです。今従業員が8000人ほどいて、大半が介護士だけど、本当は3000人ぐらいは、経営の分かる人が必要なんだって」介護は補助金産業で、介護度が上がれば補助金が増える、即ち儲けが増えるという構造がある。悪徳経営者にかかれば、寝たきりの人と国民負担とが共に際限なく増えていきかねない。そんな事態を防ぐために、「非常に効率的で合理的で、良く考えられた経営」が必要だと島田学長は言う。「学生に言ったんだよね。色々な人が滞在するホテルが舞台のテレビドラマとか映画とか、見たことあるだろうと。介護施設っていうのはホテルと病院を組み合せた施設だ。どのくらい高いスキル、幅広いスキルが必要か想像してみなさいと」。2015年度開設(予定)の国際教養学部は、政策情報学部の宮崎緑教授を学部長に任命。最も知りたい「本当に役に立つグローバル人材とは」「その養成法とは」を探るべく宮崎学部長は、中国・アジアに進出する数十人の経営者に合計何百時間という聞き取りを行った。しかし、島田学長曰く、「結局、こういうふうに教えればグローバルで稼げる力がつくってノウハウは、なかった。要するに、見える化できてないんだ。まあそうは言うけど、多少は体系的なものがあるんじゃないのと。それを、大学と協力して、開発していこうじゃないかというコンセプトの学部です」。「見える化できていない」は、「大学で教えることなんて役に立たない」と言い換えることもできる。「就業力の元があるのは大学じゃなく、たぶん、現場ですよ」というので、学生を、どんどん現場へ連れていく。国際教養学部の「現場」は、もちろん「世界」だ。4年間のうちに短期留学は全員、長期留学はオプションだが、多くの学生に参加させたいと考えている。入学式からして、パスポートとキャリーバッグ持参。入学式を終えるとすぐ成田に直行して、夕方には上海。3泊4日の海外フレッシュマンキャンプが始まる。ハイスピード経営こうした前例のない新しい取り組みを実践していくに当たり、スピードが必要だという。激動の世の中、ハイスピードで企業経営する感覚があれば大学は面白い、と島田学長は言う。「面白いっていうか、人間育てるのだから、楽しいじゃないですか。打てば響くから、若い者は」。(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)就業力を育成する

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